君に何度でも恋をする | ナノ

回り道2


「ユヅキと付き合う時に哲也と約束したんだ。この先どんな未来であってもユヅキの幸せを一番に願える奴じゃないと、未来は任せられないって。正直チャラチャラしてたから、あの時は受け止め方も曖昧だったかもしれない。でも今はちゃんと分かる、哲也がどれだけユヅキを愛しているのか…。俺が必ず幸せにする、だから俺とずっと一緒にいて欲しい…」


チャイな啓司が決めてくるとかずるい。

私はその台詞を良平くんに言われたかった。

必ず幸せにする、と。

ずっと一緒にいて欲しい、と。


「啓司あのね、一つだけお願いがあるの…」

「なに?」

「報告はいらないから…。良平くんのこと許してあげて。こんな事で壊れてほしくない。みんなの友情は一生モンでしょ?だから良平くんとちゃんと会って…昔みたいに、馬鹿やって…」


自分で壊して都合がいいかもしれない。

でもやっぱり啓司だってあの日からちゃんと笑ってない気がした。

真っ直ぐに私を見つめたまま小さく息を吐き出す啓司。


「それがユヅキの望みなのか?」


悲しげな啓司の顔に、小さく頷く。

私の口から良平くんの名前を聞くことすら、本当は嫌かもしれないけど、そんなこともう許してる!って言われるぐらいの仲であって欲しいと、願わずにはいられない。


「…あのさ、おかしいかもしんねぇんだけど…アキラより俺を選んでくれるの?マジで…」


今更どうしたの?

啓司を見ると不安そうな表情で。


「うん、啓司と結婚する」

「…それ、本音?心のそこから思ってる?哲也の前でも言える?」

「…どう、したの?」

「結婚するんだよ、俺達。結婚したらもう俺だけのもんになるんだから、ちゃんと答えてほしい…」


ちゃんと答えるって、なに?

本音なんて、言えるわけないじゃん。

矛盾も飲み込む大人だよ、私達。

今更本音言えなんて、ずるい。

無言で俯く私の手をテーブルの上、啓司がギュッと握りしめた。



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