絶対の約束1
無音でエレベーターのドアが閉まった。
良平くんを見ることのできない私にスッと手が差し出される。
大きな手がそっと。
「車行こ」
そう言って少しためらいがちにその手を取った私に指を絡めてキュッと強く握ったんだ。
「啓司の体調が戻ったら俺から話す。それまでずっと俺ん家にいて欲しい…。離し、たくねぇんだユヅキちゃんのこと。啓司に、渡せねぇ…」
できるのなら私もそうしたい。
もしかしたら、今ので良平くんが少し焦ったのかもしれない。
私にプロポーズをした啓司に。
だけど―――――
「てっちゃんが待ってるから。今日は帰りたい…」
申し訳ないと思っている。
でもちゃんと考えなきゃダメだって、哲也に言われた言葉がずっと頭にあって。
この状況に甘えて流されちゃいけないって。
ここにきてやっと啓司の存在がどれだけ大きいのか思い知らされたなんて。
「分かった、ごめん、無理言って…」
こんなに目が泳いでいる良平くんは初めてだった。
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「ただいま…」
「お帰り。先に風呂入れば?」
哲也に「今日は帰ります」って一言 LINEを送っておいたら、食卓には豪華な晩餐が並べられていて。
「こんなに誰が食べるの?」
「俺とお前!いーじゃん久々なんだから!」
ニッて白い歯を見せる哲也の笑顔に不安定な心がほんのり落ち着く。
「てっちゃん…」
「んー?」
「てっちゃん…」
「なんだよっ」
私を振り返った哲也が困ったように眉毛を下げた。
視界がボヤけていてどうしようもなくて、フワリと安心できる哲也の温もりに包まれる。
「馬鹿だなーお前…。安心しろ、俺がずっと一生傍にいてやるから」
「てっちゃん、てっちゃん…」
啓司のプロポーズよりも安心できるのはどうして?
もうこのまま哲也と2人で生きていけたら、幸せなんだろうか。
「泣きやめよー。そろそろー。それとも俺に抱かれる?」
ギョッとして哲也の腕の中から出る私を見て笑う哲也。
「だ、抱かれない!やだてっちゃんとキスなんて絶対したくない!」
「俺だってしたくねぇよ!たく。そこまで言わせんなって!」
ペシッて痛くないデコピンが私にヒットした。
肩を押して「さっさと風呂入れ!じゃなきゃ無理やりキスすんぞ!」ギャーって、哲也から逃げるように洗面所に行くと、私の好きなアロマの香りがして、久々にゆっくりと湯船に浸かった気がした。
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