呼び出し3
目の前に正座をして腕を組んでいる哲也がいて。
何故かその隣にもう一人の兄貴、健ちゃんが眉毛を下げて座っていた。
私と良平くんも正座で座って哲也の言葉を待つ。
「どうなってるか俺に分かるようにちゃんと説明しろ、アキラ」
…決して私を責めない哲也はある意味、過保護だと思う。
どう見ても私が悪いというのに、哲也の視線はさっきからずっと良平くんを睨みつけている。
だから…――
「てっちゃんあのね、」
「ユヅキは黙ってろ。アキラに聞いてる!」
「でも…」
「お前の話もちゃんと聞くから、アキラの口から説明させろ。俺にモノ言うんだからそうとうの覚悟でここにいるはずだ!」
そうかも、しれないけど…
そんな怖い顔で睨むことないのに。
チラリと隣の健ちゃんを見ると、目が合って目尻を下げて小さく微笑んだ。
――こうなったら俺は止められない――
まるでそんな風に言いそうな健ちゃんに、私も静かに微笑み返した。
「ずっとユヅキちゃんのこと忘れられなくて、どうしても逢いたくて日本に戻ってきた。当たり前に俺以外の…啓司と付き合っていたから諦めるつもりだった。けどできなかった。啓司裏切ってまでも欲しくて…――すいません、手出しました」
ガバっと良平くんが床に頭突きする勢いで土下座をした。
「啓司どーすんだよ?」
「俺からちゃんと伝える」
「許されると思うの?」
「許されなくてもユヅキちゃんは渡さない」
良平くんの言葉に心が熱くなる。
最低な言葉なのにめちゃくちゃ嬉しくって。
思わず頬を緩ませると、いきなり哲也がドンっと床を殴った。
そのまま立ち上がって良平くんの胸倉を掴みかかる。
慌てて健ちゃんが哲也をはがいじめにして止めた。
「哲也落ち着けよ!」
「分かってるよ、分かってるけどさぁ、そんっな嬉しそうな顔させやがって俺のユヅキにっ!腹立つー!」
「殴らないって決めたよね?だから俺のこと呼んだんでしょ?」
健ちゃんの説得に哲也がとうとう私を睨みつけた。
まるで昔の哲也の目付きみたいで、あまり好きではない。
顔を濁す私に哲也がハッとしたように動きを止める。
「もう平気、ケンチ助かった」
「うん…ごめんね、ユヅキ。嫌な顔させて」
優しい健ちゃんの言葉に私は首を振った。
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