「好き」と言えなくて4
「大丈夫?」
「うん…」
ベッドの上で良平くんに抱きしめられてそっと目を閉じる。
哲也に【帰れない】そうLINEをしてから何時間もたっていた。
きっと私と良平くんが一緒にいることを分かっている。
どうしたらいいのかなんて分からなくて。
ただ一緒にいたくて、離れたくなくて。
啓司のことも何も考えたくなかった。
この人とこんな風になるなんて、思いもしなかった。
「後悔してる?」
私の髪を指ですくいながら後ろから抱きしめている良平くん。
肩に小さなキスを落しながらそう聞いた。
後悔してるかどうか?正直分からない。
あるとすれば、どこからが後悔の始まりなのかさえも分かっていない。
「してないよ」
「俺も、してねぇ」
「良平くん」
「ん?」
後悔はしてないけど、未来が見えない。
「なんでも、ない」
黙り込む私をその腕が強く抱き寄せた。
くるりと反転すると良平くんと目が合う。
「好き…」そんな言葉が喉まで出かかっているのに、寸前で止めて言えなかった。
今更言葉にしてもしなくても変わらないはずなのに、その一言がこんなにも重たいなんて初めて知った。
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