「好き」と言えなくて2
「今日は帰ります、俺達」
「えっ!?なんでだよっ!?せっかく彼女連れてきてんのに、そりゃないでしょ?」
「連れてきてるから帰るんすよ。洗いざらい聞かれたらたまんねぇーもん。行くぞユヅキちゃん!じゃまた連絡しますねー!どーも!」
私の手を引いて車まで行く。
ペコッと皆さんに頭を下げる私を見て、ほんのり微笑む良平くん。
「ちょっとは息抜きできた?悪かったな、色々聞かされて…」
ポリっと照れ臭そうに頬をかく。
「彼女になってるみたいだけど私…」
良平くんばっかりがかっこいいから悔し紛れにそう言うと、急に真剣な顔になって私を掴む指に力を込めた。
「するよ、これから。そのつもり…」
良平くんらしからぬ言葉にドキンと胸が脈打った。
私の知らない良平くんの本音を知っているあの人達にどんな風に私のことを話していたのか知りたいなんて―――。
エンジンをかけてハンドルの上に伏せった良平くんは、次の瞬間真剣な顔で私を見つめた。
「明日の予定は?」
金曜日の今日。
普通は休みの土日。
キョトンとしたまま「食材少なくなってきたから買い出しのつもりだけど…」答えた私にふわりと微笑んでスッと手が伸びてくる。
頭を一撫でして戻っていく。
「…帰したくねぇ。――一緒に居たい…」
低い声で小さくでも、ハッキリとした良平くんの言葉が私に届いた。
まるで時間が止まったかのように見つめ合う私と良平くん。
戻ったはずの手がまた私の元へと伸びてきて…
その手を無言で握った。
「ユヅキ」
呼ばれてグイっと後頭部に腕が回された。
迷いも躊躇いも何もなかった。
帰したくねぇ。一緒に居たい…その言葉が何度となく私の脳内をこだまする。
胸がドキドキして、身体が熱くなる。
ずっと欲しかったその言葉に、高揚が隠せなかった。
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