雨に隠れて2
私の言葉に目を泳がせる良平くんが憎い。
「なに?どうしたの?急に…」
それでもニッコリ微笑む良平くんが憎い。
もう一本煙草を吸おうと箱から取り出そうとして顔を歪める。
「やべ、きれた」
クシャっと箱を握り潰してポケットに閉まった。
「あーちょっと歩く?煙草買う…」
私の返事も聞かずに良平くんが運転席を出て行く。
それについて私も助手席を降りた。
台風前で風が物凄い音をたてて唸っている。
雨が降り出しそうな真っ暗な空。
誰もいない2人きりの道を歩く私達の靴音がコツコツと唸りに混ざって小さく聞こえる。
煙草が売ってる自販の前で足を止めてセブンスターを押すとポコンと落ちてきた白黒の箱。
またお金を入れて同じボタンを押す良平くんの腕をギュッと掴んだ。
「はは、吸いすぎ?」
そんなこと言ってない。
「ズルイよ良平くん…」
「…え?」
「ちゃんと私の事、見て?」
手を伸ばして良平くんの頬に手を添えてこちらを向かせた。
浅黒い肌の良平くんが真っ直ぐに私を見下ろした。
ほんのり揺れてる瞳で、それでも仕方なく真っ直ぐに私を見つめる。
「どうして私の事避けてるの?」
「待てって、頼むから…」
「答えてよ」
顔を近づける私から目を逸らした良平くんは、グッと私の腕を掴んでその距離を止めた。
「…たく。こっちは意識しないように必死で理性保ってんのになんだよ。触れたら止まんなくなる、だからユヅキちゃんに触れねぇようにしてた。それなのに、そんな顔…ずりーのはユヅキちゃんだろ」
肩にかかる髪の先を、くるりと指でもて遊ぶ良平くんの本音に胸がギュッと鷲掴みにされた。
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