君に何度でも恋をする | ナノ

瞳を閉じたら3


「ユヅキ帰ってきてんの?」

「おー。けどちょっと熱っぽくて。疲れてんだよあいつ。部屋で休んでる…」

「え、大丈夫!?明日会社休ませる?」

「どーだろ。後で様子見て聞いとく、悪いなケンチ」


廊下を歩く哲也と健ちゃんの声に目を閉じた。

目を閉じると浮かぶ良平くんの声。

ユヅキって何度も呼ばれてドキドキした。

名前を呼ばれただけでこんなにもドキドキするなんておかしい。

私絶対におかしい。

啓司との間に入ってこないでって、ずっと思っていた。

だけど気づいてしまう…

入ってこないでって思う気持ちが、イコール良平くんを気にしていたということに。


「どーしたらいいの私…」


コンコン。


「ユヅキ?体調悪いんだろ?大丈夫?疲れちゃった?」

「…健ちゃん?てっちゃんは?」

「ベランダで煙草吸ってる。心配で来ちゃったけど、俺部屋には入らないから安心して」


健ちゃんの優しさに思わず頬が緩む。

相変わらず優しいな、健ちゃん。

カチャっとドアを開けると私服の健ちゃんがいた。

私を見てニッコリと優しい笑顔を向ける健ちゃんは、禁煙に成功してから煙草を一度も吸っていない。

ヘビースモーカーな哲也や啓司とは大違い。


「熱っぽい顔してる」


おでこに触れた大きな手は温かい。


「お腹すいた。健ちゃんお粥作って」

「お、いいよ!俺のお粥食ったらすぐ治るから待っててな」


ポンポンって目を細めて優しくリビングへ誘導してくれる健ちゃんに甘えて私はソファーに座った。

すぐに哲也が煙草を終えて部屋に戻ってくる。


「大丈夫なの?」

「うん、お腹空いたから健ちゃんお粥食べる」

「はは、そうしろ。ケンチ多めに作ってやって?」

「おっけー」


うちの冷蔵庫事情をよく知っている健ちゃんであり啓司は、頼むと快く料理を披露してくれる。

ソファーの上、膝を抱えて目を閉じる。

どうしても浮かんでしまう良平くんにすぐに目を開けると哲也が真っ直ぐに私を見ていた。


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