君に何度でも恋をする | ナノ

啓司との未来4


それからしばらく時間が過ぎて、だいぶパーティー会場の中も閑散としてきたはずって。

隠れながら覗くと、パーティーはとっくに終わっていて、「え?誰もいない?」片付けをしているスタッフさんの姿しかない。

キョロキョロと辺りを見回すと、壁の大きなソファーの上、良平くんが頭にタオルを乗せて横になっていた。



「良平くん、大丈夫!?」

「あーユヅキちゃん?悪い悪い、目ぇ回っちゃってねー。さっき偉いさん達みんな帰って一気に酔いが回っちゃったみたいで…少し休めば治るからって、ここでちょっと休ませて貰ってたの。…ホテル帰ったんじゃなかったの?」



呂律はしっかりしているものの、良平くんの身体は熱を帯びていて。

無駄に汗もかいている。



「…もしかして、熱ある?」



私の言葉にピクリと良平くんの頬が動いた。



「ないない、馬鹿は風邪ひかないっていうだろ!」

「ちょっとごめんね」



スーツのネクタイを外して第2ボタンまで外して鎖骨に触れると、めちゃくちゃ熱くて。

酒のせいだけではないように思える。



「たく、大胆だなぁー」

「馬鹿!笑い事じゃないっ!もう無理して…いっつもそうなんだから。良平くんの悪い癖だよ!とにかくホテル戻って薬飲まなきゃ…。まだ立てない?」

「…いや、もう平気…」



タオルを取ると、真っ直ぐに私を見つめる良平くんの瞳は熱のせいなのか、酔いのせいなのか、揺れている。

ゆっくり起き上がった彼はフゥーっと息を吐いて、それからまたゆっくり立ち上がった。

だけどすぐにヨロりとフラついて、慌てて私が身体を支えた。



「捕まって。それなら歩ける?」

「…悪いな」

「いいから。タクシーまで少しだけ我慢してね?」

「ああ」



良平くんを抱えてタクシーに乗って、私達の泊まるホテルへと移動した。

フロントで車椅子を借りようとしたけど、自力で歩けるって言い張るから、仕方なくまた肩を貸して部屋まで連れて行った。

ベッドに落とすと「いって、優しさとかねぇの?」ほんのり口端を緩めている。



「冗談言える元気があるなら安心した。でもこれ、飲んで?」



フロントで貰った風邪薬。

ペットボトルの水と錠剤。

良平くんに水を渡すと、手に力が入らないのか、ボトッと落とした。



「あ、悪り」



慌てて拾ってタオルで拭く。



「力入んねぇの、だっせぇな…」



ジッと私を見つめて一言呟いたんだ。



「飲ませてよ、ユヅキ」



ドクンと胸が音を立てた。


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