昔話3
「健ちゃん眉毛下がってる…ふふ」
酔い潰れてみんな寝ちゃったこのリビング。
一人一人布団をかけて回る私の足元で良平くんも寝ていた。
初めて見る良平くんの寝顔…。
「飲み過ぎ、顔パンパンよ」
クスッて笑いながら黒い髪を撫でるとほんのり動く。
…何やってんの、私ってば。
あまりに無防備だったから?つい髪なんて撫でちゃったけど、よくないよね。
「なんで今更戻ってきたの?」
小さく呟いてみる。
当たり前に寝ているから返事なんて返ってこないけれど、良平くんの後ろで転がっている啓司に視線を移すとなんだか胸がギュッと締め付けられるような気持ちになった。
今の私の世界に自分は存在していないって、言った時の良平くんの顔はなんだか泣いちゃいそうで。
あんな表情するなんて、思わなかった。
終わりにしたのは良平くんの方なのに、そんな良平くんを無かったことにできない私は、啓司とこれからも上手くやっていけるのだろうか?
啓司にはバレたくない。
余計な心配かけたくない。
「お願いだから、これ以上入ってこないで…」
良平くんに布団を被せると、私は自分のベッドに行かず、啓司の隣に転がって、その腕の中に入った。
無意識で私を抱きしめる啓司の胸元に顔を埋めてそっと目を閉じた。
この温もりは、私だけのもの。
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