分厚い壁2
「てっちゃん!?」
マンションの入口で煙草を咥えた哲也がいた。
壁に寄りかかって私をジッと見つめる。
「キスでもされた?」
「なっ、されてないよっ!」
「そう?んじゃよかった。一応兄貴として心配してるから。啓司に出会うまでのお前の苦しみ知ってんの、俺だけだからさ。大丈夫、俺が守ってやるから!」
ポンポンって肩を抱き寄せる哲也にギュッと抱きつく。
この人だけは、世界が終わる瞬間も私の傍にいてくれるんだろうなーって、純粋に思える。
「大袈裟だよ、てっちゃん。でもありがと…」
安心できる温もり。
「てっちゃんに彼女ができないのは私のせいかなぁ?私のお守りで忙しい、から?」
「お前、分かってんなら兄貴離れしろよなー」
「違うよ、てっちゃんがシスコンなんだよ!」
「当たり前だろ、お前以上に可愛い女なんていねぇーし」
「ふふふ、なんだって?もういっかいいってごらん?」
「…二度と言わねぇ。あーアキラきた!」
哲也の言葉に肩越しに顔を出すと良平くんが気まずさ120%で掛けてくる。
白い息を吐いて私達の前で止まった。
「ごめんユヅキちゃん。俺マジで酔ってて。久しぶりに会って飲んで調子乗ったわ。哲也俺のこと一発殴ってくれねえ?」
「やだよ。手痛くなるもん。大人なんだから自分で処理しろよな、アキラ。ユヅキに手出すつもりなら、相当の覚悟が必要だってこと、覚えておけよ?啓司の前に俺がいるから」
哲也の言葉に良平くんは、「相当の覚悟か…」ちょっと寂しそうに呟いたんだ。
▲TOP