大事なひと。


「調子にのってんなよ、貴様!のこのこ帰ってきやがって。えみまで巻き込んで!りゅーじとの甘い時間を返せ!」



ドカッと胸を押されて尻もち着く俺を仁王立ちで怒鳴りつけるゆきみ。

やっぱりすげぇ怒ってるし!

思わず圧倒されたままゆきみを見上げる。




「お前、可愛くねぇなー」

「はぁ!?その可愛くない女と付き合ってんのはどこのどいつだよ!?」




……完全に怒ってる。

まぁ正直慣れてる。

この程度の扱いは何年もされていたから。

そうは言っても俺のこと好きだってゆきみの顔に書いてもあるし。




「悪かったよ。朝一でまだお前が寝てる時に飛んだから。けどそーいうのが嫌だとか俺ちゃんと分かってねぇから。お前がどんなことされたいとか、そーいうのも分かってねぇから……全部言えよ。嫌なことも嬉しいことも、俺全部受け入れるから……」




仁王立ちの腕が解けてスッと足元に戻る。

だから俺は廊下にケツつけたまま、伸びたゆきみの手を下から掴んだ。

触れると温かいゆきみの体温。

それを引っ張ってガクッと立膝つかせた。




「ごめんね。浮気もしてねぇし、するつもりもねぇ。分かってんだろ?俺がどんだけお前のこと好きか。そんな簡単に他の女とできるならとっくにしてるよ。コメント見てからずっとお前に逢いたかった……」




俺の言葉にどんどん顔を歪めていくゆきみ。

見る見る頬を高陽させて、その顔ヤベェっつーの。

力も入れずにほんの軽くゆきみを引っ張ると、ふわりと俺の首に巻きついた。

だからそのまま背中に腕を回して抱きしめる。




「直人、好き…」




不意打ちの好きに、テンションがあがる。

耳元で小さく囁くゆきみに、色んなものが吹っ飛びそうになる。




「隆二と浮気するなよ?」

「してない」

「よかった。…ゆきみ…顔あげろ」




首に巻き付いていたゆきみが俺を見つめる。

腰にかけた腕にほんのり力を込めるとゆきみが顔を寄せた。

チュッて軽く触れ合う唇。

キスする度に思うけど、唇柔らかすぎじゃねぇ?

これ止まんなくなるんだよね、マジで。

服の中に手をいれて直で背中に触れる。

開いた唇の隙間に緩く舌を押し入れると、それをチュッて優しく吸われた。

ゆっくりと舌を絡ませるとギュッと強く俺に抱きつくゆきみ……

可愛すぎる。

柔らかいゆきみの唇を何度も何度も味わうように舌で絡ませる俺の首からゆっくりと手が移動する。

耳、首筋、肩、腕……ツーって下にいって、腰で止まるとそこをキュッと摘む。

その触り方ズリィぞ。

キスしてる顔はクソセクシーなのに、一々可愛い動きしやがって。

あーダメだ、このままここで抱きそう!




「ゆきみ、ベッド行こう」

「うん。直人、愛してる…」

「……な、一週間ヤラせて貰えないって、岩田に聞いたけど…」

「え?もう忘れた。今すぐシテ…」




歩きながら俺の腰に腕を回して寄りかかるゆきみを片手で抱いてベッドに向かう。

そのままベッドに倒れ込むように押し倒して間髪入れずにキスをする。




「後で土産もあげるな」




キスの途中でそう言うと「えっ!?お土産っ!?なになに?」……胸を押されて。




「指輪だけど。お前に似合いそうなのあったからそれだけ買ってきた」

「え、どこの?Tiffany & Co.?」

「違う」

「Cartier?」

「いや」

「えーGUCCI?」

「それも違う」

「…CHANEL?」

「いやいや」

「じゃあなによ!?」

「何ってお前、俺に抱かれるより指輪が気になってるの?」




相変わらずな現金なヤツだなって思うけど。

今更止められそうもないわけで。

キスそっちのけで指輪に目をランランと輝かせるゆきみになんだかモヤッとする。




「えだってぇ、嬉しいんだもん。直人の愛情たっぷりなプレゼントとか!」




……可愛い。

全く俺もこいつに甘いな。

仕方なくスーツのポケットからそれを出した。





「うわ、BVLGARI…あ、開けてもいい?」




いきなりかしこまるのも可愛いけど。




「どーぞ」




すぐさま箱を開けるゆきみ。

見る見る笑顔になっていく。




「コロナ?これ、婚約指輪?」

「ああ」

「直人…ほんと?」

「ああ」

「ちゃんと言って!ああじゃ分かんない!」

「……そうだな」




ゆきみの腕の中から指輪を奪うとそれを左手の薬指に差し込んだ。





「綺麗…私にすごく似合ってる」

「うん、よく似合ってる。綺麗だよ」

「直人」

「そろそろ限界。……ゆきみを俺だけのもんにしたい。次に海外出張行く時は一緒に連れて行くから。……結婚しよう」

「…はい」




噛み締めるようにそう答えてくれたゆきみ。

抱きしめてキスをして再びベッドに押し倒した。

悪いけど続きするから。

今更止められねぇから。




「直人、好き、好き。指輪ありがとう」

「大事にしろよ」

「直人がわたしを大事にしてくれたらね?」

「それなら安心だろ。ゆきみ愛してる…」




微笑むゆきみに口付けた。





*END*


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