「あのね、健一郎くん」

「…―ん?」

「あたし構わないよ、健一郎くんとそういうことするの」


かざされていた手が空中で止まって、隙間から見えるカレの目がまん丸くあたしを見ている。

金魚みたいに口をパクパクさせて…

伸びてきた腕を握り返すあたしは、腹筋をする足を押さえるみたいにカレの足にまたがって「あでも、ここではちょっと…」そう笑った。


起き上がりこぼしみたいに起き上がった健一郎くん、あたしの腰に腕を回してそのままチュッてキス。

すぐに離れた唇。

ど至近距離であたしを見つめる健一郎くんの瞳が少し揺れて、その後いつもの太陽みたいな笑顔にたどり着く。

ギュウってあたしを抱きしめて「好きだよ…」何度も耳元で囁くんだ。


「あたしも大好き」


同じように健一郎くんの耳元でそう囁くと、「やべぇ」そんな声とほぼ同時、強引な口づけ。

抑えがきかないのか、荒々しく息を吸いながらもあたしの口内を舐め回す健一郎くんの舌に負けずとあたしも舌を絡ませると、抱かれる腕に力が込められて…


「ユヅキ…」

「健一郎…」

「…止まんねぇ」


涙目でそんな弱音。

どうにも可愛くて、もう一度顔を寄せあった瞬間、キュルルルル〜健一郎くんのお腹の虫が鳴いた。

視線が絡み合って二人で爆笑!


「ごめん、めっちゃ腹へってるんだけど、ほんと、欲しくて…」

「もう!」

「ごめんってマジで!健ちゃんが食べさせてやるから許してぇ?」


そう言ってあたしの作った玉子焼きを差し出す健一郎くんの指ごとパクついてやったら、カアーって俯かれて「ユヅキエロイ」玉子焼き味のキスが降りてきた。


あたし達が繋がるのはきっとすぐそこ…

春はすぐ傍に…





*END*


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