名残惜しく唇を離す寺辻くんは、あたしの頬にチュって小さいキスを落としていく。
くすぐったくて顔を背けるあたしを逃がさないとでも言うかのよう、もう一度艶やかな瞳を唇に移していく…
「ンンッ…」
後頭部をかき乱されて寺辻くんの息も上がってくる。
ヤバイ、変な気分…
「待っ…」
「ん?」
「変な気分…」
もっと触れて欲しくて…
離れたくなくて…―――
カアーっとなる頬を押さえて俯いた。
「あ、ほんと…涙止まったね、ユヅキちゃん」
今更な発言で嬉しそうに笑う寺辻くん。
そんなトンチンカンな所も含めて…「好き」そう言ったら、物凄い真っ赤になって「オレも」って言ってくれた。
「ユヅキ…」
「え」
「ユヅキ…」
「ん」
この想いを止める術があるなら、誰か教えて欲しい―――
誰に邪魔されることもなく、あたし達はずうーっと抱き合っては甘いキスを繰り返したんだ。
―――――――――――
「これ見て?」
「え?」
目の前には星型の携帯ストラップ。
赤い糸でくくりつけられているそれは、あたしが修学旅行で買ったもの。
勿論今もあたしの携帯についていて…
「可愛いいな〜って思ってオレも買ったの」
照れた笑いを見せる寺辻くんをあたしはじっと見つめた。
「え、え…」
「うん、そういうこと。知ってるよね、これの意味?」
「うん、知ってるけど…」
「オレ等やっぱ”赤い糸”で繋がってんだって!」
「買ってたの?」
「そうそう、可愛いいな〜って思ったけど、男だしどうしよー?って迷ってたら、ユヅキちゃんが来て買っていった。それ見て可愛いいって思ったのはコレよりもユヅキちゃんで…まぁ、そんな馴れ初め?」
「え、じゃあその時からあたしを…?」
「そう。あの時からずっと見てた!」
それは夢みたいな現実で。
相変わらずな照れ笑いを零す寺辻くんに、胸が熱くなった。
きっとあたし達はこうなる運命だって、そう信じる。
だってそれは、幸せを呼ぶ”赤い糸”のストラップ。
素敵な出逢いが訪れますように…って、願いを込めて。
「お揃いで買うと恋が実るって、これで実証できたね、オレ達」
寺辻くんがニコっと笑った瞬間、小指がフワリと引っ張られた、そんな気がしたんだ。
*END*
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