ごめん…

たどり着いたのは、学校の裏にある高台。

バイクを停めて後部座席のあたしを軽々と抱き下ろしてくれる寺辻くん。


「ユヅキちゃん、ごめん」


優しい声があたしの頬を掠って…

そのまま強く抱きしめられる…――――




「寺辻くん…」

「…色々ごめん…」

「いいの…」

「マジで嬉しかった…」


そう言いながらあたしの髪を指で救って、そこにチュってキスを落とされる。

ドキっとして寺辻くんを見上げたあたしに、フワって優しい笑顔が降りてくる。


「あたし信じるよ、寺辻くんのこと。だから…」


もう一度あたしと付き合って!!

そう言いたかったのに…

あたしの唇に指をそっと添える寺辻くん。

言葉を止めたあたしに、困ったような顔の寺辻くん。




「ごめん…」


そう言う寺辻くんの顔は辛そうで。


「言わないで…」



そんな言葉が続いた。



思考が全部止まってしまった気がして、脳が真っ白になった。

え、あたし今…拒否られた?

ドクンと胸が妙な胸騒ぎを覚えて、視界が緩んでいく。

ポロっと零れた涙、思った通り、寺辻くんの指が拭ってくれているというのに、その瞳には何の色も見えない。

ああ、あたし、フラれちゃうんだ…って分かった。


馬鹿みたい。

間違えて告白して、ちょっと優しくされて、舞い上がって、勝手に本気になっちゃって…


所詮、住む世界が違う。

あんなに分かってたつもりなのに、今もなお、あたしの気持ちは留まることを知らない。

なんて惨めなの?


「泣かないで、オレユヅキちゃんに泣かれるのがいちばん辛い…」


そう言うけど、あたしを泣かせているのは寺辻くんだもん。

なんて言葉に出して言えないけど…。


「ああ、もうっ…泣きやんで?抑えきかなくなっちまう…」


真っ赤な顔でそう言う寺辻くんに、あたしの脳がちょっとだけ生き返った気がした。


「え、なに?抑えって、なに?」


そう聞くあたしに、自嘲的笑いを浮かべる寺辻くんは、あたしの唇を指でスッとなぞった。

途端に鼓動が早まるあたしは、それでも寺辻くんの答えを待ってカレをみあげた。



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