校庭には沢山の生徒が集まっていて、その中心にいるのは、この界隈を牛耳っている暴走族チーム”second”と、あれは、この前ゲームセンターで将吉を呼んだ、寺辻くんの喧嘩相手の先輩!?
「え、なんで?」
「寺辻が手出した女に惚れてるらしいよ、あの先輩。でも一方的に切っちゃったから女が傷ついて…それで反撃?」
「そんな…」
寺辻くんが喧嘩をしたシーンを見たわけじゃない。
でも、強いって知ってる。
でも…、でも…―――
「寺辻くんっ!?」
叫ぶあたしの声に、しっかりと視線を飛ばしてくれる寺辻くん。
でもその顔は険しくて…
「バカッ!こっちくんな!いいからそこで待っとけ!」
バシっと指を指されて、あたしは止まった。
「ユヅキちゃん!オレが守るからっ!信じて待っとけ!」
そんな言い方、ズルイ。
何も言えないじゃない。
あの日もそうやって、あたしを一人で守ってくれた。
戦闘態勢に入った寺辻くんはなんとも言えないカンフーみたいな構えで、向かってくる先輩達をたった一人で倒していく。
急所をツボ押ししているのか、喧嘩とはまたちょっと違うその戦い方に目を奪われてしまうあたしは、胸の奥がキュンと痛い。
「コラー!!」
遅ればせながら野次馬達を追い出すように、校庭に先生が走ってきた時には、寺辻くんが最後の一人を蹴落とした後だった。
「寺辻、ちょっと来いっ!」
先生が校庭の中心に向かって走って行く。
寺辻くんを含むsecondメンバーは「やっべぇ」って叫ぶと、それぞれ四方八方に散って行く。
慌てる先生が、寺辻くんに的を絞ったら、将吉がその前を踊るように走り回って…
「ユナちゃん悪い、ユヅキちゃん借りる!こっち!」
ユナからあたしを剥がしてあたしの手を取った寺辻くん、バイクのエンジンをかけてそのまま走り出す。
ノーヘルのあたし達は風を切ってグングン走る。
寺辻くんの温もりに触れて、心が落ち着いていくのを後ろで感じていた。
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