バタンと後部座席のドアを閉めると、流れるように走り出す高級車。
椅子の座り心地の良さとか、普段ならテンションあがるようなことも今は一切どうでもよくって、あたしは哲也くんが心配でたまらなかったんだ。
「こちらです」
そう言って、助手席の人があたしを病室へ誘導する。
ガラリと個室のドアを開けるとそこには頭に包帯を巻いた哲也くんが苦笑いであたしを迎えた。
「大丈夫?」
思わず駆け寄ったあたしをジロっと見てから「別に痛くねぇし!」なんて強がった声が届く。
見るからに痛々しく見えるその姿に自然と涙がこみ上げてきてしまって…零れる涙を止めることができなくなった。
そんなあたしをいつもの如く面倒くさそうに見つめる哲也くんは、それでもベッドの脇にしゃがんで泣くあたしの頭をただ撫ぜてくれたんだ。
寺辻くんが言った「哲也一人でも大丈夫」って言葉があたしの脳内を駆け巡っていて…
「負けたの?」
思わず聞いてしまったその言葉に、みるみる哲也くんの顔が歪んでしまう。
「んなわけねぇだろ!」
「じゃあなんでケガ?」
「それは…その―――後ろ取られて…バッドで殴られただけ…だからって負けじゃねぇから。つーか今頃相手も他の病院送り込まれてるぜもう…」
哲也くんのよく分からない言い訳が言い終わると同時に、病室のドアがガラリと開いて、乱れた制服のまま…若干血のりをつけたままのsecondメンバーが入って来た。
あたしを見て顔を歪ませたのは女嫌いのネスで。
「ユヅキちゃん、ごめんね」
寺辻くんの低い声があたしに謝った。
その腕も顔も傷だらけで…哲也くんに負けず劣らず痛々しい。
「ケガ、ちゃんと診て貰わなきゃ…みんなも…」
「平気だってこれくらい。痛くないから!それよりユヅキちゃんの所には誰も来てねぇよね?オレの女って顔割れたから…もしかしたらユヅキちゃんも…」
そこまで言って口をつぐんだ寺辻くん。
先を聞くのが怖いけど、先の言葉は容易に想像できた。
「狙われるかもしれねぇって」
将吉の言葉に身震いがした。
あたしも狙われたらどうするんだろう?
「護衛つけるか、こいつに」
啓司が言うけど、護衛って…護衛??
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