ふわふわしたような、でも甘酸っぱいような不思議な感覚だった。
みんな恋をすると、こういう気持ちを持ち揃えているんだろうか…
「で、言えたの?」
翌日。
しっかりと寺辻くんに送って貰ったあたしは、すごく浮足立った気持ちのまま、次の日学校に来た。
教室に入るとすでに来ていたユナがあたしを見ていて。
そっか、昨日メールしてなかったよね、ユナに…。
「それが…―――」
「は?言ってないの?」
「うん…タイミングつかめなくて…」
「なんだそれ…。早く言わないと戻れなくなるよ?いいの?」
ユナに言われてまた気分が落ちていく。
分かってるつもりなんだけど、寺辻くんの笑顔を見ると何も言えなくて、たぶんもう…戻れないところにいるんだって思ってしまう。
「あっ、ユヅキさんっ、いた!ちょっと来てください!!」
「へっ??」
他のクラスの全然知らない男子があたしを見てズカズカと教室に入って来た。
たぶんこの人…secondのチームにいる人だろうな…ってのが、醸し出す雰囲気で分かった。
だって目つきも怖いし、制服も着崩している。
何より、寺辻くん達と同じ匂いがする…。
「あの、何ですか!?」
「ケンチさんに連れてこいって頼まれてます、自分!一緒に来てくれますよね?」
secondの幹部にいる寺辻くんの彼女のあたしには、どうやら年齢関係なしに敬語みたいで…。
「ええ、どこに?」
「とにかく急いで貰えます?」
「…でも…」
あまりここで騒ぎだてるとクラスの人のいるし…。
仕方なくあたしはどうしてか人質気分で、まるで連行されるみたいにその人の後を着いて行った。
正門を抜けると目の前に広がっているのはそう…―――――
「は、ベンツ!?」
黒塗りフルスモークのベンツの後部座席をまたイカツイ人がドアを開けていて…「乗ってください」そう言われても…
怖いよ…。
「本当に寺辻くんの所に行くんですか?」
「勿論っす。信じて下さい!あのじつは、昨日哲也さんがちょっとやっちゃいまして…それで今哲也さん病院にいるんですよ…。で、ケンチさん達はその落とし前つけに行ってるんで、哲也さんのこと診てて欲しいって…」
「…哲也くんケガしたの?」
「はい、でもたいしたことないんで」
「早く行って!!」
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