あたしの腕を掴んで自分の後ろに隠したまま哲也くんはコキコキっと首を鳴らした。
「お前何気に度胸あんだな?」
そう言ってちょっとだけ軽く鼻で笑った。
でもそれはあたしをバカにしたとかそういう笑いじゃなくてそう…――――
「ちょっと見直したわ、女のくせに!」
まさかの褒め言葉で。
「オレ等に寄ってくる女なんてほとんどがオレ等目当てだから。secondの幹部と歩いてりゃデカイ顔できるって、後は単にオレ等に抱かれたいっつーだけの女たち。適当に遊ぶだけなら構わねぇけど、本気で付き合う相手がお前でよかったよ、ケンチは」
ベラベラとそこまで言うと、哲也くんはゲーセンのドアを開ける前で立ち止まってあたしをチラっと振り返った。
「ケンチを頼むぞ?」
ズキン…。
胸が痛いのは仕方のないことで。
自分の好きな人からそんな言葉を言われてしまったあたしは、自分のしたことの大きさを改めて実感した。
同時にもう、戻れない所にいるんだと…。
「…―――うん」
そう答えたあたしの頭をポスっと哲也くんの手が撫ぜて…ドアを開けたんだ。
「ユヅキちゃんデートの続き行こっか!」
こっちに手を差し出して爽やかな笑顔を飛ばしているのはあたしの初カレ、寺辻くん。
確か、敵は三人いなかったっけ?
うん、そうだ。
三人しっかりと地面に転がってる。
「これ全部寺辻くんがやったの?」
思わずそう聞くあたしに、「聞いてなかったのぉ、オレの言葉」って笑った。
聞いてたけど…。
あんなイカツイ格好の人が来たら、細く見える寺辻くんだから、勝てないって普通思うよ。
確かに寺辻くん達は強いって噂は聞くけど…
実際喧嘩してるところなんて見たことないし…
「だから言ったろ?」
耳元で哲也くんが面倒くさそうにそう言うけど…。
「ユヅキちゃん?怖かった?」
気づいたらあたしは、ちょっと震えてしまっていて…。
ホッとしたのと、気が抜けたのとが一気にきちゃって…フラっとしてしまう。
そんなあたしが崩れ落ちないように、寺辻くんが腕を回して支えてくれて。
でもその距離が近くて…
あたしの目の前は、カレの鎖骨。
これって抱きしめられてる?
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