怖いに決まってるよ!!
そう言いたいけど、寺辻くんの腕がそれをそうさせないんだ。
怖いのは怖いけれど、あたしをそうまでして護ってくれるんだって思えた。
「…大丈夫です」
「まぁ通達したし、オレ等もいるし、何かあったら護ってやるからそんな心配そうな顔すんなよな?」
哲也くんがクシャっとあたしの髪を撫ぜた。
ドキンと胸が高鳴って、次の瞬間「哲也、オレの!」グイっと寺辻くんに引き寄せられた。
…哲也くんに護ってやる…って言われたからなのか?
それとも、寺辻くんにバックハグされているからなのか?
どっちでなのか分からないあたしの胸のドキドキが支配している。
「ユヅキちゃんのお披露目会いつにする?」
ipad片手に黒縁メガネをかけたハーフのネスがあたしにそんな質問。
でもあたしにはネスの言ってる意味が全く分からなくて…
「今週末でいいんじゃねぇの?」
金髪八木将吉がチュッパチャップスを舐めたままネスにそう言って。
その視線がゆっくりとあたしに飛んでくる。
迷いのない真っ直ぐなその目は、ちょっと怖いくらい。
「じゃあ今週末で…いい?ケンチ」
リーダー啓司の言葉にあたしの後ろで「それでいい?」って寺辻くんの声。
「あの、お披露目ってなに?あたし何かされちゃうの?」
「まっさか!オレ等5人の彼女はみんなに披露するって…だからユヅキちゃんをみんなに自慢してもいいよね?」
…可愛い。
寺辻くんがあたしを不安気に見つめる瞳が可愛くてあたしは気づいたらコクンと頷いていた。
「今週末で!」
「了解!んじゃみんなに伝達しとく」
ネスの返事に寺辻くんはまたあたしを後ろからギュっと抱きしめた。
よく分からないけど、寺辻くんの長い腕があたしに絡まることが嬉しくて…
そんなことが心地よい気さえしてくる。
目の前に哲也くんがいるっていうのに。
みんながあたし達を見ているっていうのに、寺辻くんの温もりが嫌じゃないなんて…
おかしいよね。
「じゃ、二人っきりになりに行こっか!」
そう言われて、返事もままならないあたしの腕を引いてゲーセンから出て行った。
でも、目の前に広がっているのはそう…――――バイクに乗った不良たち、こっちを見てニヤリと笑ったんだ。
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