不安のわけ1
私の未来に
あなた以外いらない
――――――――――…
「ぬおー!久々に遠出したな。あ、荷物貸して」
小さめの旅行鞄を取り出す私の手から軽々と二人分の荷物を持ち上げるタカヒロくん。
その顔は嬉しそうで。
裏腹に私の心は複雑。
せっかくの旅行なのに。
初めての旅行なのに。
初めて過ごすクリスマスなのに。
今更こんな気持ちになる私って、何を根拠にタカヒロくんを好きだと言ったんだろうか。
――――違う。
タカヒロくんへの気持ちに嘘なんかない。
私が今抱えている気持ちは何てゆうか…
「ユヅキ?どうかした?疲れちゃった?」
ホテルのロビーたる場所でチェックインの手続きを済ませたタカヒロくんが、柱に背をもたれてボーッとしていた私の顔を覗き込んだ。
『あ、なんでもない』
「ほんとに?大丈夫?無理してない?」
心配性なタカヒロくんはしつこくそう聞いてきて、だから私は笑ってしまったんだ。
「やっと笑ってくれた」
呟いたその言葉に、全身電流が走るみたいに痛くて。
私の異変にタカヒロくんが気づいていない訳ないのに、何してたんだろう。
ただタカヒロくんを不安にさせただけなんて。
『あの…』
「うん?」
『ごめんねっ』
「ん?ごめん?…ここ、まずかった?…夜景スポットで有名じゃんか!もしかしたら何か嫌な思い出でもあった?」
タカヒロくんの言葉に私はどうにも目頭が熱くなってしまって。
こうやって泣いたりしたら男の人はたいてい困っちゃうのに。
それに私、こんなに泣き虫じゃないのに!
それなのに、思いとは別に私の瞳からはポロポロと涙が溢れてしまって。
当たり前に抱きしめてくれるタカヒロくん。
赤ちゃんをあやすみたいに私の背中をポンポンって優しく叩いてくれて。
泣いてる事も、隠していた事も謝りたくて。
『前に一度来たことあって…』
「そっか、俺そいつと考え被っちゃったか!」
わざと明るく言うのはタカヒロくんの優しさだって痛い程分かっている。
私が無駄に落ち込まないようにそうしてくれてるって。
私なんかの為に…
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