赤い糸3




「…ユヅキに言いたいことあるんだけど…」


赤みを増したタカヒロくんの頬。

握った手に唇をつけて喋るタカヒロくんは色気たっぷりで、心臓が痛い。


『ま…待って!!』


耐え切れずそう言う私を、優しく見つめてくれるタカヒロくん。


「ま、今言うことでもないから。また後で、ちゃんと言わせて?」

『…う、うん…。私もあるの、タカヒロくんに言いたいこと』

「うん、分かった」

『うん…』

「とりあえず、飯食おっか! ユヅキが好きすぎてちょっと腹いっぱいだけど…」


ニカって口を大きく開けて笑うタカヒロくんは、ゆっくりと私の手を離した。

なんとなくタカヒロくんから出る雰囲気が、今聞いちゃいけない話のような気がして。

それはいわゆる…私がタカヒロくんに言いたいこととさほど変わらないことのように思えて、私たちは胸がいっぱいのお腹に、朝ご飯を流し込んだんだった。


「苦しい…」


部屋に戻ってベッドの上に仰向けに寝転ぶタカヒロくんは、子供みたいでつい頬が緩んでしまう。

こんな風にだれた姿とか、きっと私以外の人は知らないし、想像もできないんだろうな…そう思うと、タカヒロくんのプライベートを全て私が独占しているように思えて嬉しい。

タカヒロくんを好きになってからというもの、私の喜怒哀楽は激しくて、ちょっとしたことですぐに不安になる分、ほんの小さな幸せを見つけることも得意になった気がする。


誰かを好きになって、こんな温かい気持ちがあるなんて、今まで知らなかった私は損した気分…―――には、当たり前にならなくて。

この気持ちはタカヒロくんだから持てるんだって。

タカヒロくん以外の人と付き合っていたのなら、私は今ここにいることもないし、こんな風に、誰かを愛おしいと思うこともないんだなぁと。


ああ、私ってば、本当に幸せ!!






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