赤い糸1
目が覚めて隣にいるのは
私の大好きな人…
――――――――…
タカヒロくんと一緒に暮らしたら、毎日こんな幸せな朝を迎えられるのかと思うと、私の中で一つの気持ちが芽生えた。
今まで付き合ってきた人と、泊まりに行ったことは何度もあるけれど、同棲したことは一度もなくて。
まだ私が若かったから?そう思わなかっただけなのかは分からないけれど…
タカヒロくんと一緒に住みたい、なんて思ってしまった。
今の私たちは同棲とはいえない、言うなれば一昔前に流行ったであろう、週末婚状態。
平日はやっぱりお互いに仕事優先の生活になってしまうのは、社会人として当たり前で仕方のないこと。
けれど、金曜日の午後にはもう、私の脳内はタカヒロくんと逢えるってことに集中力までも持っていかれることが多かった。
定時であがって、アキラのお店でタカヒロくんを待つ時間は、私にとって幸せへのカウントダウンな一時で。
ガランっと重たいドアを開けて、店内に入ってくるタカヒロくんを見るのがすごく好きだった。
ちょっと疲れた顔のタカヒロくんが、スーツのネクタイを緩めながら私を見つけて笑顔に変わる瞬間が、たまらなく好き…。
そんなタカヒロくんがアキラに文句を言われながらも、人目を気にしないで、ギュって抱きしめてくれる瞬間も、最高に好き…。
ああ私ってば、本当にタカヒロくんのことが、好きなんだなぁ…。
今更ながらの実感だった。
「ユヅキ?」
『うん?』
朝食をとっている私たち。
ホテルのバイキングで向かい合って座る私に、タカヒロくんが不思議そうに首を傾げた。
「顔…」
『ん?』
「笑ってるよ? エロイことでも思い出したの?」
ブッ!!
思わず口に入れていたパンを吹き出しそうになるのを、寸前で堪えた。
目の前のタカヒロくんは、もうニヤって顔に変わっていて、味噌汁をズズズって吸った。
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