絆5
「サプライズ見ちゃった?」
私の髪を撫でながら耳元でそう言って。
その、優しい微笑みが最高に愛おしいんだ。
ペアリングに名前入りメッセージ。
そういう甘いこと、本当の本当は憧れていたなんて言ったら笑う?
笑うわけないよね…。
だって私とタカヒロくんの気持ちは一緒だから、だからメッセージを入れてくれたんだよね?
こんなサプライズ、相手がタカヒロくんだから喜べるんだって、実感する。
映画やドラマみたいに、そんなメッセージを貰えるなんて思ってもなかったから、余計に嬉しい。
『…ん』
言葉を出したら止まらないんじゃないかって。
公共の場にも関わらず、私は何を口に出すか自信がない。
タカヒロくんの愛が大きくて、それが嬉しくて…
それに今すぐ応えたいって私の想い。
言葉にしたらきっと、タカヒロくんは喜んでくれると思うけど、二人で恥ずかしくなること間違いなしだろうな…なんて思う。
だから私の表情でこの気持ちが伝わればいい――――
「んじゃホテル直行〜」
――――どうやら通じたみたい!
昨日あった不安やら罪悪感やらはもうなくて、
こうしてタカヒロくんと一緒に過ごせている事に、幸せを感じずにはいられない。
場所とか、物とか、例え同じ何かがあったとしても…
隣にいるのがタカヒロくんだってだけで、私には不安も恐れもないって思う。
本来なら、長年たってようやくできるものなのかもしれない。
沢山の時を越えて、沢山の苦難を越えて、培(つちか)うものなのかもしれない。
けれど、今の私とタカヒロくんには間違いなく存在しているって思うんだ。
―――絆って意味が。
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