絆2
「ユヅキどれがいい?」
『タカヒロくんは?』
「俺はユヅキが好きな奴でいいよ」
『そんなの私だってタカヒロくんが気に入ったのでいいよ』
さっきからこの繰り返しで、さすがの店員さんも苦笑いを浮かべている。
でも本当にそう思っていて。
比べる訳じゃないけれど、今までの人はデザインとかも自分で決める傾向があったから。
こうやって私の意見を聞いてくれても結局自分の方を選んで。
でもタカヒロくんは私の意見に合わせてくれるって分かってる。
分かってるから私はタカヒロくんが選んだ物が欲しいのかもしれない。
自分の意見が通ると分かっているから、彼の意見を尊重したいんだ。
「ほんとに俺どれでも」
『じゃあ気に入ったの指さして。私も指すから。いくよ?せーのっ』
私の言葉に焦りながらも、タカヒロくんが指差したのはシルバーとゴールドの二連もので、真ん中に十字の入った可愛いらしいデザインの指輪だった。
指差ししていない私を見て「やられた」って顔のタカヒロくんに私はニッコリ笑顔を返した。
それは、私がいいな〜って思った指輪だったから。
「ユヅキの意地悪」
拗ねたタカヒロくんの声に私はただ笑顔が溢れてしまって。
『以心伝心だよ、タカヒロくん。これ私が一番いいな〜って思ってた指輪…だからすごい嬉しい』
「…そっか、んじゃこれにしよっか」
『うんっ!』
私の返事を確認してからタカヒロくんが店員さんを呼んだ。
財布からカードを出して支払いを済ませるタカヒロくんは、店員さんに話しかけられて照れた笑いを零している。
勿論それは仕方ないというか、当たり前というか。
それなのに私って、店員さんにまでヤキモキしちゃって…
タカヒロくんの事カッコイイって思っているんだろうな〜…とか。
私と似合ってないとか思われてたら嫌だな〜…とか。
巡るめく妄想が私の脳内を悩ませていたけど、タカヒロくんが振り返った瞬間、そんな事も忘れて私は笑顔を返した。
「後で取りにこよ!俺腹減っちゃって先飯行ってもいいかな?」
私の手を当たり前に握るタカヒロくん。
『うん!私もお腹空いた』
「よし、じゃあ今日はね〜」
私を誘導するタカヒロくんの腕に力がこもって。
私と同じ歩幅で歩いてくれるタカヒロくんと、この先もずっと一緒にいたい。
ずっと、ずっと…
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