不安のわけ2




『凄く嬉しかったし、凄く楽しみにしてたの…でも心の中が変な罪悪感みたいなのあって…どしたらいいか分からなくて…』

「ここやめる?ユヅキが苦しいなら場所変えようか?」


鍵をカチャッて振って、どこまでも私に優しいタカヒロくん。


「ユヅキがね、そいつの事思い出して辛いんなら…そんな思い詰めた顔なら…やめよ。俺がユヅキの心独り占め出来たらこんな顔させなかったんだな…」


小さな溜息と、悔しそうなタカヒロくんの表情に私の心が打ち砕かれた気分で。

自分が何て小さな事に捕われていたんだろうって。

確かにこの場所は元カレが連れて来てくれた場所に違いないけど、そんなの私の気持ち一つでどうにでもなるはずなのに。

タカヒロくんへの罪悪感を持つ事すら、タカヒロくんに失礼なんじゃないかって。

タカヒロくんが大好きって気持ちに嘘なんて何一つないのに。

終わった過去にいつまでも縛られていたのは私なんだって。


「俺って頼りないな〜。ユヅキの事こんなに好きなのに、それと同じくらいの気持ち返して欲しいなんて我が儘。ユヅキの過去にまで嫉妬してる、ごめんな」


ギュッ…とタカヒロくんの腕に力が入る。

ストレートなタカヒロくんの言葉に私の涙腺は防波堤を越えてあらしを巻き起こすみたい。

こんなロビーの端っこで子供みたいに嗚咽を繰り返す。

でもモヤモヤした気持ちは、涙と一緒に洗い流されていくようで。

心にあった不安を取り除いてくれた「ユヅキの事こんなに好きなのに、それと同じくらいの気持ち返して欲しい」ってタカヒロくんの言葉。

私がタカヒロくんをこんなにも好きだから、変に嫌われたくなかったんだって。


何かの拍子に元カレと来ていた事がタカヒロくんにバレて嫌われたらどうしよう?って。

そんな不安ばかりが頭の中にあって。

タカヒロくんが私と同じ気持ちでいてくれているなんてとっくに分かっていたことなのに…

信じていないから不安になるの?

好きだから不安になるの?

嫌われたくないから不安になるの?


『ふぇっ…タカヒロくんごめんなさいっ…』


頭の中にある気持ちを繋がらない言葉で無理矢理繋げて。

不安だって事タカヒロくんに嫌われたくないって事…

何より、タカヒロくんが好きってこと。






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