ヤキモチ5
目の前のタカヒロくんが慌てた理由は私が泣いてるから。
そんな私をギュッと抱きしめてくれるタカヒロくんは、お風呂上りだってだけで温かいわけじゃない。
『…怒ったでしょ』
「怒った?何が?」
『アキラにあんなことされて』
「怒ってんのはアキラもだけど、自分自身に対して。ユヅキには怒ってるつもりなかったんだけど…俺、態度悪かった?不安にさせた?」
私を離して肩に手を置いて顔を覗き込む。
困惑色の瞳は、それでも真っ直ぐに私を捕らえていて。
『怒ってるから……先に寝ろ、って言ったんじゃないの?』
「いや、ほんとにユヅキには怒ってないよ。……起こすけど…って言ったんだけど。ユヅキの体調とか一番大事だけど、ベッドの中では俺も我慢が……何言ってんのかな、もう…」
カァー…って音を立てるかのよう、タカヒロくんが耳まで真っ赤になる。
『じゃあ私のこと、好き?嫌いになったりしてない?』
こんな子供みたいな台詞、口にする日がくるなんて思ってもみなかった。
でも、タカヒロくんのことが本気で好きだから、ほんのちょっとの事で不安になってしまうし、ほんのちょっとの不安も取り除きたいって思うんだ。
そんな私の気持ちを分かってくれるだろうタカヒロくんは、私を抱きしめる腕に力を込めた。
「そんなわけないよー。出会った時より今のがもっと好きだよ。いろんなユヅキ知る度、毎日好きになってるよ…」
簡単に気持ちが落ち着いて。
自然と口にしてくれたタカヒロくんの言葉に真実味を感じずにはいられない。
『ごめんね』
「いやっ、俺がちゃんとしてたらユヅキを不安にさせなかったよ、ごめんな」
そう言ってオデコにチュッてキスをくれた。
私の顔を覗き込んでニヤッて笑うタカヒロくん。
そのまま身体をギュッてされて。
「けどユヅキ、俺とエッチしたかったって、思っちゃっていい?」
ギャッ!!
って恥ずかしくて離れようとする私を離すまいと強く抱きしめていて。
ちょうど鎖骨の辺りに私の顔が埋め込まれている。
悔しい!
間違ってないけど…
クックックッ…って肩を揺らして笑うタカヒロくんの鎖骨をペロッと舐めてやった。
直後に、大後悔!!
ゴクッてタカヒロくんが生唾飲み込んで私に視線を向けた。
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