本物5
気づいたら私はタカヒロくんに抱えられてリビングのソファーに横たわっていた。
「ごめん、逆上せたよね。気分悪くない?」
私を下ろしたタカヒロくんは冷蔵庫からミネラルウォーターを出して私にゆっくり飲ませてくれた。
『ありがとう』
「無理矢理しないって言ったのに、超感情的になってた…ごめん」
『タカヒロくんもしかして彼女とお風呂入るのって?』
「初めて。何で分かるの?」
『分かったんじゃなくて…そうだといいな…って思ったの』
「あんま可愛いこと言わないで…せっかくの理性が又崩壊しちゃう。今日はもうシないって決めたから」
どこまでも私に合わせてくれて私を優先してくれるんだって、それが嬉しくて。
優しい人は沢山いるけれど、私にとってタカヒロくん以上に優しい人はもう、巡り逢うことはないって思う。
――――そう、信じられる。
『クリスマスって…』
「うん一緒に過ごそ。…年明けもOK?」
当たり前みたいに言ってくれるタカヒロくん。
私の濡れたままの前髪をタオルで叩いて水を拭き取ってくれてて。
私の返事なんて決まってるのに様子を伺うみたいな態度のタカヒロくんは、今まで損な恋愛ばかりだったんだって。
でも同時にタカヒロくんにとっての一番が私以外の人じゃなくてよかったって心から思えた。
タカヒロくんの言葉や行動に過去がほんの少し垣間見えたりすることが、私には嬉しく新鮮で。
素直でピュアなタカヒロくんの色に混ざりたいって思う私は、こんな風に恋愛について沢山考えたりできるんだって今更気づいた。
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