ピンク色2




ただ、分かっているのは…


『私、自分で想うよりタカヒロくんのこと、好きみたい…』


口から出た言葉に偽りなんて当たり前になくって。

ドラマや映画で想いを伝え合う恋人達を、いいな〜って思っていたんだ。

素直じゃない私は、心の中の声の半分も言葉に出すことが出来ずにいたから。

想いは、思うよりも相手に伝わっていなくて。

言葉の足りない自分を悔やんだりもいっぱいした。

その度にただ自分を責めるだけで。

それなのに…

ただ相手がタカヒロくんだってだけで、私はこんなにも素直になれるんだって知る。


私の言葉にそっと身体を離すタカヒロくん。

目の前の顔は真っ赤で。


「…――食おっか――」


思いの外あっさりそう言ったタカヒロくんは、私が盛りつけた生姜焼きをテーブルに運んでくれた。


『ありがとう。お酒飲む?』


冷蔵庫を覗いた所で常備してるお酒はない。

タカヒロくんの家には沢山あったけど、普段私は飲まないから。


「いいや。素面(しらふ)でいたいから」


そんな何気ない言葉が、何だかとても嬉しかった。

テレビをつけて一緒にご飯を食べる。

生姜焼きをパクって一口食べるタカヒロくんを凝視していると「プッ」って小さく笑いが届いて。


「めっちゃ美味い! 毎日これでご飯三杯いける」

『ほんと?』

「ほんと」


大袈裟にそう言ってくれただろうタカヒロくんは、その言葉通りご飯三杯食べてくれた。


ソファーでくつろぐタカヒロくんを後ろに、私はさっさと洗い物をした。

まるで勝手に新婚気分を味わっているみたいな感覚で、

自然と頬が緩んでいってしまう。

席を立ち上がったタカヒロくんは、私があげた灰皿を手にベランダに出た。

ふふ。

気使ってくれてるんだって、それがまた嬉しくって。

洗い物を終えた私は温かい珈琲をそっとリビングのテーブルに二つ置いた。


「ご馳走様」


ポンッて私の頭に触れるとタカヒロくんは、ソファーに座った。


『お風呂っていつもシャワー? 湯舟入る?』

「えっ? 風呂?」

『うん、湯舟入るなら温泉の素入れようかな〜って』

「ユヅキの好きにして。俺シャワーだけでも構わないし、湯あるなら入るし」

『じゃあお湯入れてくるね』


タカヒロくんにそう言ってリビングを出た私は、ふと立ち止まって振り返ったんだ。






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