似たもの同士4





『私センスないからよく分からなかったんだけど、それはアキラも欲しがってたから大丈夫かなって』


硝子で出来た黒い灰皿。


「ありがとう。――でも俺、ユヅキの家では吸うつもりなかった…綺麗な壁紙に申し訳ないよ」


私の部屋を見回してそう言うタカヒロくんは心なしか、少し顔が赤い。


『大丈夫、それ小さいでしょ。だから私の家ではその灰皿内に納めてくれればいいから』

「………」

『タカヒロくん?』

「ダメ、見ちゃ」


クルッて急に背中を向けられて。

え、どうしたんだろ。


『ごめん、余計なことした? 私』


そう聞くもタカヒロくんは、首を横に振るだけで。

背中を向けられている私は、タカヒロくんの表情が読めなくて不安が押し寄せてくる。

タカヒロくんが気使ってくれる人だって分かってたから買ってみたんだけど…ダメだったのかな。


『あの…タカヒロくんごめんね』

「違うって! ユヅキ…」


遠慮がちに言う私に、少し大きめなタカヒロくんの声がして。

私は視線を上げた。

そこにはしっかりと私を見据えたタカヒロくんがいて。


「こんな風に優しくされたの初めてで…泣きそうだよ俺」


想定外な言葉が飛んできた。

え、待って!

私そんないいことしたつもりはないけど。

こんなに感動してくれるタカヒロくんって一体…


「昨日さ、俺がキス上手いって言ったでしょう、ユヅキ」

『え?うん…』

「俺の顔とか身体目当てで言い寄る女ばっかだったの、ずっと。並んで歩くのに調度いい…とか。ほんとの俺を見てくれてる女なんて一人もいなかった。だから俺もヤケになって女なんてヤレたらいいや…ぐらいでいてね…」


肩を落として言葉を続けるタカヒロくんが少し小さく見える。

勝手な想像でタカヒロくんの過去を気にしていた自分が馬鹿らしくも思えて。

環境や状況は違ったけれど、私とタカヒロくんが求めていたものは同じだったんだと気づいた。

不安とか淋しさとか、ある意味絶望感を強く持っていて。

だから、相手に優しくされるとこんな風に異常な程感情が高ぶってしまうものなんだと。

私達は、似た者同士なんだと。






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