俺の彼女4
『プレゼンはうまくいきそう?』
ビーフシチューの熱を冷ましながら隣に座るタカヒロくんに聞いた。
「うん、すっげぇいい感じ! 絶対俺に決まると思うわ」
焼肉定食を食べつつ、から揚げにマヨネーズをつけてニッコリ笑うタカヒロくん。
マヨネーズが好きなんだなって全然違うことを思いながら笑顔を返すと、レモンだけがかかったから揚げを私に差し出した。
「あーん」
『え?』
口をパクって開けて私の口元を見つめるタカヒロくん。
『あの、恥ずかしいからいいよ』
「食べたそうに見てなかった?」
笑みを浮かべながら少し私に近寄る。
お箸はまだ私にから揚げを捧げていて。
「アキラなんて見てないから食べなって」
「俺全部見てんだけど、さっきから。何回キスしてんの? 俺がちょ〜っと手繋いだぐらいでプリプリするくせに」
ふて腐れたアキラの顔に思わず笑ったら、開いた口の中にタカヒロくんのお箸からから揚げがこぼれ落ちた。
「うまい?」
モグモグしながら首を縦に振るとポスッてタカヒロくんが頭を撫でた。
「ま、俺ユヅキに逢うのも我慢して資料作ったんだし、勝たなきゃ意味ないよね! だから絶対勝ち取ってやるよ」
小さくガッツポーズをして、箸を置くと水をガバガバ喉に流しこんで。
左手首に巻かれたシルバーのごっつい時計に目を向ける。
「うわっ、一本吸えるかな」
慌てたような声を出したものの、その仕草は得に焦りを感じさせることはなく、スーツの内ポケットから出した煙草にシュッと火をつけた。
と、ほぼ同じタイミングで、レストランの中に人が入って来て、キョロキョロしながら近寄ってきた。
「あーいたいた、タカヒロさん! そろそろ時間っすよ?」
ポンッてタカヒロくんの肩に手を乗せてそう言った彼は、隣に座る私に視線を移すと軽く会釈をした。
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