小さな不安6




「うん、勿論!あねぇ、朝ご飯作って欲しいな俺」


ちょっと甘えた声でそうサラリと答えるタカヒロくんは、私の後ろにあった冷蔵庫を指差した。

拍子抜けしながらも私は言われるがまま冷蔵庫を開けてちょっと考える。

食材はわりと揃ってるから自炊してるんだーなんて思って。


『勝手に使ってもいいの、私?』

「いいよ、何も隠すもんないし」


そんなささやかな言葉が嬉しくも感じて、タカヒロくんの後ろ姿を愛しく見つめていたら振り返って私の所に戻ってきた。


「すぐあがるな」


髪を一撫でして軽くキスをすると、Yシャツをバサッて脱ぎ捨てて洗面所に行った。

何となく…「一緒に入ろ」って言われるんじゃないかって思った私がいて。

前の彼氏は一緒に入るのが基本だったから、本当は嫌だなって思う私の気持ちを分かってくれてるみたいで、さっさと一人で入るタカヒロくんを嬉しく思った。

その間私は明日の朝ご飯の下ごしらえをしつつ、何だかまるで新婚さんになったような気分だった。

30分もしないうちにタカヒロくんが出てきて、部屋着を着ていることにホッとした。


「ユヅキちゃん、こんなんで平気かな?」


そう言って私に差し出してくれたのはタカヒロくんの部屋着。


『うん、ありがとう』

「シャンプーとか俺と一緒だけど…適当に使っていいから」

『うんありがと!じゃあお風呂借ります』


コンビニで買った袋を抱えて洗面所の扉を閉めると、タカヒロくんの温もりに包まれるみたいに甘い匂いが漂っていた。

そして…―――


ドキドキしながらも緩む頬を押さえてお風呂を出たら、ベランダの窓の前で煙草を吸ってるタカヒロくんが笑ったんだ。






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