小さな不安5
「もーちょい金貯まったらもっと上の階行きたいんだけど、高いんだよね。でもここでもそこそこ綺麗でしょ?」
リビングに隣接している大きな窓のカーテンを開けると広めのベランダがあって、その先には東京の夜景がきらびやかに顔を出した。
遠くに東京タワーもスカイツリーも見えて新宿の高層ビルも混ざっていて、空は無限に広く、東京でも星が見えた。
『ん〜すごい!私のとこと大違いだよぉ…ここでも十分高そうだね…』
「ま、忙しいのは有り難い事だけど…一週間連絡できなかったのもプレゼン控えてて大詰めだったの。明日国際フォーラムでプレゼンやるんだ!絶対勝つから、俺!」
スーツの上着を脱いでネクタイを緩める姿はどこから見てもかっこよくて、ただ脱いでるだけなのに、妙に色気を感じて私は夜景に視線を戻した。
時計は21時半を過ぎた所。
明日は土曜日で、タカヒロくんは仕事。
私も来週の資料作りに行こうか迷っていて。
「風呂先入る?」
『あ、タカヒロくん先入って。疲れてるでしょ!…明日何時に起きる?』
「ん〜直行だから8時に起きれば間に合うかな」
半分脱ぎながらそう答えるタカヒロくん。
大事な事聞いてなかったけど私今日泊まっていいんだよね?
「うち来る?」とは言われたけれど、「うち泊まる?」とは言われていないわけで…。
さっきの流れから想定すると…50%以上の確率で私はきっとこの部屋に泊まっていいんだって思うけど…。
そういう些細なことも…聞いていいんだろうか?
そんな私に対してタカヒロくんは「どうかした?」そう聞いてくる。
聞かれたところでどう聞けばいいか正直分からない。
『あの…私…』
「うん?」
『えっと、その…』
「うん?」
ちょっと可笑しそうに笑いながら私を見ているタカヒロくんは無駄に服が肌蹴ていてセクシーで…。
変なところに気が紛れて…勝手に真っ赤になってく。
だからか…
「あ、もしかして具合悪い?顔赤いな…」
『や、そうじゃなくって…』
「うん?」
『私ここに泊まっていいの?』
…言っちゃった!!
ああ、恥ずかしい!!
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