小さな不安4
『アキラに聞けば分かるんだけど、男運がないっていうか…タカヒロくんのこと信じてないわけじゃないんだけど、展開が早いし、からかわれてるかもしれない…とか。ただヤリたいだけかもしれない…とか、マイナスなことばかり考えちゃって。でもほんの一瞬だけだから!でもそんな想い抱えたまま、そういうことシちゃってからじゃきっと戻れなくなるんじゃないかって思ったし。だから不安になって…』
一気に気持ちを吐き出した私をギュッと抱きしめてくれるのはタカヒロくんで。
やっと触れてくれた安心感で又涙が出た。
「もう大丈夫だから…」
掠れたタカヒロくんの声と、見つめる瞳が近づいて…
零れた涙の後をタカヒロくんの唇が拭ってくれて…
触れた感触が心地良くてそのまま目を閉じると、待っていたみたいにタカヒロくんの唇が私の唇にそっと重なった。
ンチュ…
って音と柔らかな感触に、掴まっていた腕に力を込める。
―――――――――…
コツコツ…
足音?
ハッてお互い目を開けて思わず離れると、マンションの入口に入ってく気まずそうなオジサンが私達を見ないように通り過ぎた。
気づいてなかったわけじゃないけど、ここって思いきりタカヒロくんの住むマンションの前だった。
感情的になりすぎて、TPOもあったもんじゃない!
私とした事が…
「恥ずかしい?」
そんな私を少し笑いながらそう聞くタカヒロくんは、全く恥ずかしくないって顔に見えなくもなくて…『そりゃあ』って答えた私にチュッて不意打ちキスをした。
「いいじゃん!見せつけてやろう?俺チューは全然出来る」
そんな事言われてもー。
悪気もなにもないタカヒロくんの可愛い発言は単に私をひそかに興奮させつつも、ドキドキ鼓動を速まらせるばかりである。
でも、触れるだけのキスだったのは一応タカヒロくんも控えめだったんじゃないのかな〜って思っている私も危険なのかも〜って身体が熱くなった。
『ダメ!もー私ここに来れなくなっちゃうよ』
「それは困るから、中入ろ」
そう笑ってタカヒロくんに連れられて、オートロックで高級そうなマンションの14階にあるタカヒロくんの家に入った。
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