小さな不安2
『それ買うの、久々?』
つい、うっかり言葉にしてしまった私は、タカヒロくんのキョトンとした顔にすぐに恥ずかしくなって俯いた。
一瞬「何のこと?」って目をしてたタカヒロくんは、視線をグルッと一周させてから私と同じように恥ずかしそうな顔で。
「うん。…あ、無理矢理とかヤらないから安心して」
『うん。そんな風に見てないから』
そう言った私はひそかに生唾を飲み込んだ。
男の人と付き合ったのは片手で数える程度で、男運のない私は中々長続きしなくて…
身体目的?みたいな人もいて、ちゃんと愛されたって感じる事が今までなかったのが事実。
くわえて前の彼氏と別れてから丸三年。
あれれ、ちょっとヤバクない?
タカヒロくんのこと、信じてない訳ないし、まだ好きになって間もないけど…
展開早くて、私ちゃんとタカヒロくんとデキルかな?
急に不安になってしまった。
きっとタカヒロくんは無理強いはしないだろうし、私に合わせてくれるって思うけど…
大丈夫かな?
前に友達に相談した時は、
『それはユヅキがちゃんと濡れてないからじゃない?相手に前戯ちゃんとしてもらってる?それ大事だよ』
なんて言われたけど、結局その人とはその後すぐに別れちゃったからそーゆうのを確認する事もなく…
超不安…
浮かれてすっかり忘れていた自分が一瞬で嫌になった。
嫌われたらどうしよう?って不安とか、
軽蔑されたらどうしよう?って思いが頭を駆け巡っているみたいで、若干歩幅が遅くなる私。
「ユヅキちゃん?」
そんな私にすぐに気づいてくれちゃうタカヒロくんを本当に愛しく思うのに。
『本当に私でいいの?』
「えっ?」
足を止めた私を、不安げに覗き込むタカヒロくんの目は困惑色。
もう、目の前にはタカヒロくんの住むマンションがそびえ立っているというのに…
躊躇いが消えない私は足が動かなくて。
いい年して馬鹿みたい、とか思いながらも目頭が熱くなってしまう。
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