運命の出会い4




『え?あれ?ご飯なんてメニューにないよね?』


アキラを見つめてそう聞く私に、隣のタカヒロくんは水をゴクゴク飲んでる。


「そう、これはタカヒロ限定」

『え、ズルイ!』


思わず身を乗り出した私に「プッ」って両方から聞こえてきた。

タカヒロくんも悪戯っ子な笑顔をくれて、前のアキラも口を閉じたまま含み笑いしていて。


「ちなみにそれはユヅキ限定」


いつも飲んでいるピンク色のピーチ味のカクテルを指差してそう言うアキラ。

そういえば、いつも何も言わずにこれを出してくれていたアキラ。

てっきりメニューかと思ってたけど、そもそもメニューなんて見た事なくない?


「何食べたい?」


聞かれて答えたものをたいてい出してくれるから。


「うちはメニューないから客の食べたいものを提供してるんだけど、ユヅキ気づいてなかったの…」


呆れたようなアキラの言葉に恥ずかしくて俯くと、タカヒロくんの「可愛い」って声が届いた。


『あ、私お手洗い』


ひえ〜っ!

気づかなかったのもそうだけど、笑われた事も恥ずかしくて私は逃げるように席をたった。


ふう〜。

鏡に映った私はほんのり頬が紅くなっているにも関わらず、口元は笑っていて。

タカヒロくんの言う通り、今日ここで会えるなんて思っていなかったし、これってやっぱり運命?

パシッて両頬を叩いて気を入れ直した。


深呼吸をして、タカヒロくんの元に戻ると、もうカウンターからたっていて、吸っていた煙草をグリグリって灰皿に押し潰した。


「行こ」


そう言って私の手を握るタカヒロくんは、アキラに振り返って「ごちそーさん」て笑った。


『あ、お金私払ってない』


繋がれたタカヒロくんの手を引っ張った私に笑顔で手を振るアキラ。


「今日は俺の奢り」

『え!でも…』

「早く二人きりになりたかったから」


地下のエレベーターに乗り込むと耳元でそう掠れたタカヒロくんの声がして…

近いのに触れられない距離が又もどかしく感じる。


『…ありがとう』


お礼を言う私に「全然」って言うタカヒロくんの瞳は色っぽい。

地上に出た私達はこれから何処に向かうんだろうか?






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