運命の出会い3
『私達大学が一緒で、結構飲みに来てたんだ』
アキラに視線を移しながらそう言うと、目を細めて笑いながら「へ〜」って頷いた。
今日はこの前と違ってスーツだから、また雰囲気が違う。
『何か、疲れてる?』
煙草を出して火をつけたタカヒロくんに向かってそう聞くと、少し遠慮気味に苦笑いを返したんだ。
照明が暗いせいか、どうにもタカヒロくんの顔に影が見えて、単純に顔色が悪いのか、体調が悪いのか、どっちにもとれた。
「仕事忙しくてね、プレゼン準備ようやく終わったんだ。まーじ疲れた」
クタッて、カウンター机に肘を伸ばして身体を投げ出すタカヒロくん。
『お疲れ様』
思わずサラサラの髪に触れたくなる思いをグッと押さえて、上から覗き込み気味にそう言うと、タカヒロくんの視線だけが私を追ってきて、口端をほんの少しあげて笑った。
「今日会えるなんて思ってなかった」
『私も』
「運命感じる」
ドキッ…
色っぽいタカヒロくんの声と視線は勿論、投げ出した手をカタンって動かして私に伸ばすと簡単にその手に掴まって、ギュっと握られた。
アキラの事も忘れちゃいそうなこのタカヒロくんとの距離に、自然と顔が赤くなる。
私の返事を待つ前に目を閉じるタカヒロくんに、超抱きつきたい衝動にかられる私って…大丈夫かな?
基本、受け身のくせに本人目の前にするとスキンシップを取りたくなるのも厄介な癖だよね、本当…。
タカヒロくんと繋がってるのは手の平のほんの一部。
そこがめちゃめちゃ熱くて顔までほてってきちゃう。
「ユヅキちゃん、俺食うの待ってて?」
パチって目の開いたタカヒロくんがそう言って、その先にあるかもしれない未知の出来事を軽く想像しながら私は静かに頷いた。
「はい、いつもの」
タイミングよくアキラがタカヒロくんの前に生姜焼きを置くと、スッと私達の手が離れた。
それをほんの少し寂しく思う私って…
「ユヅキはこっちね」
冷たい水をくれたアキラは私達を応援してくれるみたいな表情だった。
『ありがとう』
そう言って水を一口飲み込むと、喉がひんやり気持ち良かった。
それでも右半身は隣にタカヒロくんがいるって意識からか、すごく熱くて…
チラッと横目で見ると豪快にご飯を頬張っているタカヒロくん。
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