幸せだから4
「楽しかった?」
アキラのバーを出たエレベーターでそうタカヒロに聞かれた。
思えば全ての始まりはここで。
勿論出逢いは合コンだったけど、このバーで偶然タカヒロと逢ったことで、運命を感じたのは確かで。
このエレベーターに乗った時にすごくドキドキしたのを今でも覚えている。
「早く二人っきりになりたかったから」…そう言われて、触れられないもどかしさが私の中で溢れたんだったなぁ。
何だか懐かしいな。
『うん』
そう頷いた私は、ちょっと背伸びをしてタカヒロにキスをした。
一瞬の出来事で「?」目を大きく見開くタカヒロだったけど「ユヅキ」小さく名前を呼ぶと、私の腰に回した腕を引き寄せてちょっと強めのキスが落ちてきた。
舌で歯列をなぞられると唾液が溢れて、そのまま舌を絡ませて吸い上げられると甘い音が二人っきりのエレベーターの中に響く。
抱き寄せられる腕と、絡み合う舌が絶妙なハーモニーを奏でていて…身体の芯から熱くなる。
『ハァッ…タカヒロォッ…』
私の声と、きっとトロンとしているであろう瞳にニヤっと微笑むタカヒロは耳元で一言囁いたんだ。
「このエレベーター絶対監視カメラついてるけど…誘ったのユヅキだから仕方ないよね…」
『えっ!ほんとっ!?やだそれ先に言ってよ!』
「いいじゃん、ほら続き…舌出して…」
えーって舌を私に差し出すタカヒロ。
そんなこと今さら出来るわけもなくて。
『だめ、絶対だめだから!続きは帰ってからです!』
「…ユヅキから誘ってくれんの?」
『なっ…』
「ユヅキから色々シテくれんの?」
『…もう』
仕方なく頷くと、ニンマリ笑顔を飛ばして「早く帰ろうぜ!」急いで大通りに出てタクシーを捕まえた。
時々こうして恥ずかしいお願いをしてくるタカヒロだけど…――――そんなタカヒロが私はずっと大好きだよ。
*END*
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