幸せだから3
―――夜。
カランっとドアを開けて中に入ると、そこには相変わらずの景色が広がっていて。
私とタカヒロを見て一瞬吃驚した顔のアキラが、それでも嬉しそうに微笑むと「いらっしゃい」そう声をかけてくれた。
アキラの告白から3か月過ぎた今日この頃。
そろそろアキラの傷が癒えた…とかそんなんじゃなくて、私たちがアキラに会いたくなってしまったんだった。
迷惑かな?と思いながらも、私とタカヒロをカウンターに通すアキラの変わっていない姿に何だかちょっとジーンとしてしまう。
「元気だった?ユヅキ」
そう言って私の好きなピーチのカクテルをコトンと奇麗に出してくれるアキラ。
『うん。アキラは?』
「お陰さまで…」
そう言ってほんの少し視線をズラした。
そこには一人でカウンターに座って飲んでいる女性がいて。
少しだけ心配そうに私たちを見ている。
「ども」
すぐにタカヒロがそっちに向って小さく会釈をすると、その女性もフワリと微笑んで軽く頭を下げた。
『え、アキラの?』
私の問いかけに「そう、昨日からな…」すごいタイミング!
思わずタカヒロと目を合わせて微笑み合った。
「安心したよアキラ」
「そりゃどうも」
そう言うと、タカヒロが大好きな生姜焼きが出てきて。
単純に嬉しかったんだ。
アキラみたいな素敵な人が幸せになる権利は絶対にあって。
私はその相手にはなれなかったけれど、アキラを一番だって想ってくれる人が現れて嬉しい。
「嬉しそうだなユヅキ」
ペシってオデコを軽く弾かれて…。
『だって…』
「まぁお前らのお陰かな…俺が一歩前に進めたのは」
『アキラ…』
「俺も幸せだから、安心しろよ」
『うん、うん、よかったよ…』
ちょっと胸がいっぱいで熱くなった頬を抑えると、タカヒロがポンポンって頭を撫ぜてくれた。
「いや、俺達も相当幸せだから!」
そう言うタカヒロが可笑しくて、アキラと二人視線を合わせると、小さく笑い合ったんだ。
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