■ 新ルール1


【side ゆきみ】




お盆最終日、暴走族チーム【one】の大きな暴走があった。

青倉庫に人が戻ってきたのも合わせて、その人の多さにちょっと吃驚する。

それは、回集した一真のチームZEROの仲間達だった。

あの日、チームを引退した一真はチームメイトをタカヒロに預けたんだ。

ノリも一真も出入りは許されているけど、一度も姿を現すことはない。

奈々は、タカヒロに言われたんだろうけどずっとあのジャケットを羽織っている。

チームのみんなは誰一人ノリや奈々のことを聞いてくる子はいなかったけど、きっとみんな分かっているんじゃないかとも思う。


でも、あの日のわたし達の傷は誰も知らない。

そんなのよく知りもしない子達に言うことでもないし。

ただ奈々を¨そおゆう目¨で見る子がいないのが唯一の救いだった。

万が一奈々に何かあったなら、タカヒロが黙ってないって、そんな安心感があった。

そう思えるくらいに、タカヒロは奈々を側においているから。


『奈々は車?』

『うん』


指差す方向には黒い暴走車の前に座り込んで話ているタカヒロ達がいて。

今日の行き先なんかを確認しているみたい。

配下のチームも今日は引き連れての暴走らしく、全然知らない人が沢山いた。

だからか、直人とケンチはわたしと奈々から少しも離れる気配がなくって。

チームの女って意味ではノリだけしか伝達されていないのが事実で、わたしと奈々を「誰?」って目で見る配下チームの人達の視線は少し嫌な気分になる。

見せ者じゃないけど、そんなふうにわたし達を見ている気がしないでもないから。


『何か…すごいね』


苦笑い気味の奈々の言葉に、わたしは苦笑いを返した。

奈々の言ってる”すごい”は、この世界観なんだと思うわけで。

いつの間にかoneはこんなに大きなチームになっていたのかって思うんだ。



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