■ キミを守るために1
それから一週間たった。
青倉庫ではノリの妊娠が広まっていた。
わたしはそれを必死で隠していたというのに、あっさりとノリの口からばらまかれて。
¨タカヒロは絶対渡さない攻撃¨を仕掛けているノリは、今もVIPを堂々と使っている。
同時に、奈々がタカヒロをたぶらかしていた…的な変な噂まで流れていて。
ようやく奈々の顔の痣が消えたのに、青倉庫に行けない状況だった。
勿論それは奈々の耳に入れることはなく。
奈々の家には、わたしと哲也と直人だけが出入りを許されている。
ノリは、そこまでしてタカヒロを渡したくないというのに、お腹の子供がタカヒロじゃないってことに、疑問というか矛盾を感じてしまう。
だったらどうしてタカヒロ以外の誰かに抱かれたんだろう?
わたしには、ノリの気持ちがさっぱり分からない。
例えばそれを自分に置き換えたら、そう考えるとますます分からなくなる。
だって、わたしが哲也以外の人と…
そんなの考えただけで笑ってしまう。
なりふり構わずタカヒロを好きでいればよかったんじゃないか?とさえ思えてしまうほどに。
哲也からの、大事な話の続きはまだ聞かされていない。
奈々のせいとかそんなんじゃなくて、わたし達は完全にタイミングを逃してしまった。
でも、それでもわたしの心中穏やかなのは、すぐ側にこうやって哲也も奈々もいてくれてるからなんだと思う。
奈々は、あの日以降、毎日のようにうなされている。
最初にわたしの家に来た時は、たぶん¨父親¨への恐怖でうなされていたんだと思う。
今は、タカヒロへの想いばかりが奈々を蝕(むしば)んでいるんじゃないかってわたしは勝手に思っている。
それでもケンチにだけは頼ろうとしない奈々は、やっぱり一本筋が通っているな〜って思うんだ。
弱いわたしはいつも直人に頼っていているから。
直人をあんな風にわたしから離れられなくしたのは、哲也でもない、わたし自身なんだから。