■ 事件勃発1


それからわたし達は奈々を迎えに行って、TSUTAYAに向かった。

ちょっとだけガラが悪いと有名なこのTSUTAYAは、哲也の行き着け。

駐輪場にバイクを停めたわたし達四人は、TSUTAYAの中に入って哲也の好きなテレビドラマの棚に行く。


『ケンチ、AVは自分で借りてね』

「いいじゃ〜ん!哲也さんので…

「怒られますよ、ケンチさん」


ピシャって直人が言うからリアルで笑ってしまった。


『A…V…?』


そんな会話を横に、奈々がシカメっ面でケンチを見たから又笑えた。

それでもわたしと奈々を置いて構わずそのアダルトコーナーに入って行くケンチと直人に、わたしは奈々と二人きりになった事を少し嬉しく思う。



『奈々あのねっ』

『うん?』


何だかうまく伝えたい言葉が見つからなくて、わたしはただ奈々の手をギュッと握りしめた。

一瞬大きく目を見開いた奈々は、わたしに微笑みかけた。


『うん、ゆきみ分かった』


そう言ってくれた。


『わたしも奈々が友達一号って、知ってた?』


そう問い掛けるわたしに、奈々は満面の笑みで頷いた。


こうやって誰かと笑いあうなんて、あの頃のわたしは思ってもみなくて。

友達って存在がこんなにも大きくて嬉しいものなんだってことを、改めて分かった。

哲也はタカヒロが奈々を好きじゃないってそう言ったけれど…

好きじゃない女にそこまでするタカヒロって、一体どういうつもりなんだろうか。

わたしだったら哲也の為以外には自分の身体を張ることなんてできやしないんだろうなって思う。

奈々にとってタカヒロの存在って物凄く大きいんだろうなって。

それでもタカヒロの相手はノリであることに変わりはなくって。

でも単独で奈々を守るタカヒロは、やっぱりそこに「愛」があるんじゃないかってわたしは勝手に思ったんだ。




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―――――そんなつかの間の幸せは一気に崩れ落ちてしまう…――――――




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