■ 叶わぬ想い2
【side 奈々】
『ゆきみは?』
一人で戻って来た直人は、寂しそうにあたしの隣に腰を下ろした。
手にはケンチのコーラとあたしのアップルだけ持っていて、渡されたあたしに対して小さな笑みを浮かべるだけで何も言わない。
蹲るみたいに膝に顔を埋める直人。
ここにゆきみがいない事と何か関係があるって思うけど…
複雑そうな直人を前にあたしはそっと直人の頭を撫でた。
ビクっとして顔を上げた直人は、やっぱりあたしが見ても泣きそうな顔で。
『直人どうしたの?』
そう聞いた。
直人は「なんでもないっす」ってあたしに心配かけまいと笑顔をくれたけど、その笑顔自体泣いているようで。
「奈々ちゃん来週空いてる?」
不意に反対側から聞こえたケンチの声にあたしは視線をケンチに向けた。
『え、なに?』
「来週空いてる?」
『あうん、特に何もないよ』
「よかった、じゃあ走りあるから参加しねぇ?」
『うん…へー?って走りぃ?』
キョトンとケンチを見ると爽やかにニカッと笑った。
ケンチはタカヒロがあたしを助けてくれたあの日以降、毎日あたしの送り迎えの御役目で、歳が一歳しか離れてないっていうのと人懐っこい性格からかすぐに親しくなれた。
あたしより年下なのに醸し出す雰囲気は全然大人っぽくて、たまにあたしを年下みたいに扱った。
でも逆にそんな些細な事もあたしにとっては新鮮で嬉しかった。
男女問わずこんな風に成り立つ友情の心地良さを体で痛感していた。
だから全てにおいてもっと早く出会っていたかった…
ゆきみにも、タカヒロにも…
もっと早く出会っていたかったと思わずにはいられない。
こんな時代錯誤の中で走るoneの仲間は、あたしの人生に深く深く関わってくる。