■ 闇の中の真実4
【side ゆきみ】
『直人は女の子にモテるでしょう』
バーに下りて飲み物を注文したわたしと直人は、哲也が好きなお菓子を持ってVIPまでをゆっくりと話しながら歩く。
「モテないっすよ、女なんて寄ってこねぇ」
ぶっきら棒にそう答えた直人はちょっとだけ照れ臭そうな顔だった。
『みんな見る目ないね〜。わたしが中学生だったら絶対に直人を選ぶのにな。…あ、まぁ直人にも選ぶ権利はあるけどね(笑)』
「…俺、哲也さんに殺されるんじゃないすか?冗談でも哲也さんに聞こえるように言わないで下さいよ」
ちょっと困ったように直人は笑った。
そうやってわたしの心の中以外では、哲也とわたしの関係は暗黙の了解なのに…
それなりの言葉だって、それなりの態度だって哲也はわたしにくれるのに…
ただ一つ、肝心な言葉をくれない哲也。
それを悲しむことすら、わたしには必要ないのかもしれないけど。
哲也の気持ちはわたしじゃなくてノリのものなのだから。
静かな廊下はVIP部屋の声を静かに響かせていた。
『あの奈々って子が絡んでるんじゃないよね?』
「絡んでないって、考えすぎだよノリちゃん…」
『タカヒロの目、あの子見る時のタカヒロの目が嫌い!何か全部持ってかれそう……怖いの…哲也…』
「大丈夫だよノリちゃん」
『本当に大丈夫なのっ?』
「…大丈夫」
『タカヒロがいなくなったりしないよね?』
「しないから」
『哲也は…――あたしの側にいてくれるよね?』
「えっ?」
『哲也はあたしの側にずっといてくれるんだよね?』
「…いるよ」
カタン…
『あ、差し入れ』
中に入れない直人を廊下の少し手前辺りで待たせたまま、わたしはVIPのドアを一人開けた。
振り返った哲也の顔が物凄く吃驚していて、目が合ったノリは…泣きそうな顔をしている。
対面に座っているもんかと思っていた哲也とノリは、残念なことに横並びに座っていて。
不自然なその二人に、わたしの胸がチクンと痛んだ。
その距離が少し近い気がして、わたしはすぐに目を逸らした。