■ 闇の中の真実2
【side 奈々】
「奈々ちゃん?」
不思議そうに首を傾げるケンチに、あたしは小さく首を振った。
ゆきみと直人を見送るあたしは体育座りしている膝に顔を隠すように埋めた。
繰り返し心の中で唱えるのは、謝罪の言葉…
ゆきみごめんね…
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明かりの燈っていないこの部屋はカーテンを開けたがための窓から入る月明かりで十分よく見える。
あたしの手にはしっかりと握り閉めた携帯があって、そこから微かに聞こえるタカヒロの声は窓の外で響くタカヒロの言葉と全く同じ。
酒の臭いをぷんぷんさせている親父はジッとあたしを見据えている。
まだ手には缶ビールを持っていて時たまヒィックという音を出していた。
様子を伺うような親父はあたしに一歩近づいた。
『いやっ』
これ以上無理って程に窓に体を擦りつけるようにあたしは下がる。
振り返ったマンションの下にはタカヒロの姿はなくってデカイ単車だけがポツンと姿を変えずに佇んでいる。
タカヒロの姿が見えないだけであたしは一気に不安になって呼吸がどんどん早くなっていくのを感じた。
苦しい…
息が出来ない!!
タスケテ…タカヒロ…
「誰と喋ってた?」
アルコール焼けしたしゃがれた親父の声が、あたしの体内に響き渡った。
あたしは首をぶんぶん横に振ることしか出来ずにいる。
体が恐怖で震えて息も出来ない!
溢れ出てくる涙は熱くて、体がゆうことをきかなくて…
あたしに近づく親父があたしの腕を強引に掴んだ。
ベッドの上で泣きながらあたしは掴まれた腕を離そうと暴れる。
ガンッ!
鈍い音と脇腹に入る激痛に悶えた。
ガチャガチャって音と同時に聞こえたのは、手にしていた携帯から聞こえた優しい声とは掛け離れていたけど、あたしの名前を呼んだその声は紛れもなくタカヒロの声だった。
「奈々っどこだっ」
『タカヒロ……』
脇腹の辺りが痛すぎて声なんか出せない位怯えていたのに、ほんの隙間から金髪を視界に捕らえるとホッと安堵感が全身にみなぎった。