■ カムフラージュ3


自分でも分かりきった答えなのに、どうしようもなく不安になる…

哲也は誓ってわたしを見捨てたりしないって分かっているのに、それでも不安になる…

そんなわたしの不安を掻き消すように、哲也がわたしを抱きしめた――――

しっかりと両手を背中に回してわたしの髪に顔を埋める。

背中に絡みつく腕は熱くって。

わたしを包む哲也の体温も熱くって。


「どうした?」

『………』

「俺より大事なゆきみが傷つけられたなんて、尋常じゃいられねぇなぁ。相手殺すかもしれねぇ」


真剣なその言葉に、わたしはただただ胸がキュンと鳴いた。

それだけで十分だって…

そう思っているのに。

どうして人間はそれ以上を求めてしまうんだろうか。

聞かなくていい事を。

言わなきゃいい事を。

わざわざ自分が傷つくような質問を、どうして飛ばしてしまいたくなるんだろうか。


『ノリは?』


そう呟いたわたしは、答えが怖くてギュッと哲也にしがみついた。

ほんの一瞬哲也の体がピクンとした事で、わたしは聞いた事を後悔した。


「俺がやるまでもねぇだろ」

『そだね』


当然の答えなのかもしれない。

それでも哲也は実際ノリが傷つけられたりしたなら…タカヒロよりも先に相手の所に行くのかもしれない。

そしてわたしは、そんな哲也の背中を見送るしか出来ないんだろうか。

そんな例えばのお話は、単なるわたしの被害妄想に過ぎないけれど、それでも実際にその現場を目の当たりにする勇気もなく、わたしはきっとケンチや直人に泣きつく事しか出来ないんだと思う。


哲也を止められないのは結局わたし自身なんだと。

タカヒロのせいにして楽になろうとしてるわたしなんて、哲也の側にいていいのだろうか?

こんな弱気な事を考えるのも嫌気がさす。


わたしって、何なんだろう…―――――



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