■ カムフラージュ2


「まぁ、いいか。奈々ちゃんさ…」

『へっ!?』


いきなり話題が変わった事に対応できかねて、つい素っ頓狂な声を出してしまった。

それでも哲也はそんな事は気にしていないようで。


「奈々ちゃん大丈夫かな…」


そう呟いた。


『奈々?』

「ん〜、何か隠してんだよなあの子…ゆきみ知らねぇ?」


振り返った哲也は心配顔。

近づくわたしの手を離すと今度は逃げられないように肩に腕を回した。

あっという間に距離が縮まって又心臓が暴れ出す。

今は奈々の話しなのに、集中出来ない自分が惨めに思えた。

すぐ隣にある哲也の温もりにドキドキしていて、わたしは首を横に振った。


「どうして奈々ちゃんと仲良くなったんだ?」

『あー…』


それはあの日。

ノリを気遣う哲也を見ていたくなくて、一人になったら偶然奈々の集団リンチ現場に出くわしたから。

なんて前置きはさすがに言わないけれど、その時の事を哲也に話した。


集団リンチって言葉に、哲也の顔つきが見る見る変わっていく。

そんな事は弱い人間しかしないって分かっているから。

一人じゃ何も出来ない事も、一緒にやる人がいればいるほど躊躇なく何でも出来るって、分かっているから哲也は怒っている。

当たり前に哲也は何でも一人で出来るという事を見せ付ける人だから。

そんな哲也が集団リンチを許す訳がなかった。

肩に回している腕にさえ強く力が篭っていて、反対側の手でポケットに入っている煙草を吸い始めた。


『でも今はもう何も言ってきてないと思うから。奈々も無理にほじくり返されたくないと思うんじゃないかな…』


オロオロと哲也にそう告げる。

今にも哲也が動き出してしまいそうな雰囲気を醸し出しているから、わたしは奈々の気持ちを優先させたかった。

そんなわたしの言葉にフッと哲也が微笑んだ。

肩にあった腕はスーっと腰まで落ちて、そこでまたグイっと引き寄せられた。


「分かってる。だから奈々ちゃんが傷つけられた時は容赦しねぇ、俺に隠すなよ?」

『うん。…わたしは?』

「え?」

『もしもわたしが何か隠していて、それが助けて欲しいことだったら、哲也わたしも助けてくれる?』




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