■ 恋心7
【side ゆきみ】
目の前の哲也は、わたしの言葉に一瞬だけ動きを止めた。
ゆっくりとわたしを見下ろす瞳は全身熱くなりそうな程強い視線を送っていて。
薄い哲也の唇がそっと開いた。
「側にいてぇか?」
そう言って男モード全開の哲也は、VIPの方へ行こうとしていた体を反転させてわたしの首に腕を回した。
あっという間にわたし達の距離が縮まって。
強烈な哲也の香りが鼻を掠めた。
耳元に降り注ぐ熱い吐息に、わたしの脳内がすぐに哲也でいっぱいになって。
哲也は分かっているんだ。
わたしの気持ちを分かっている。
わたしが言いたいこと
思ってること…
何もかもを分かっているんだ。
そんな質問、口に出さなくてもわたしの答えなんて分かっているはずなのに、哲也はわざとそう言うんだ…
チームのみんなが見てるから、わざとそう言うんだ…
ゆきみは俺のもんだって。
そんな事してくれなくても、わたしは哲也以外見てないのに…
いつだって不安なのはわたしばっかりなのに…
そんな風に気持ちをごまかして辛いのは、自分なのにね…
『哲也は心配性だから』
「…そうだな」
結局哲也はわたしよりノリを選ぶ…
悲しいけど、それが現実。