■ 恋心4
相手が二人なのに対して直人一人。
わたしはどうにか捕まれた腕を振りほどきたくて…
『…ねぇ…』
「あ゛?」
『血、出てる…大丈夫?』
スッと捕まれてない方の手を頬に添える。
下からじっとりと見つめ上げるわたしに対して、ほんの一瞬隙が見えた。
同時にわたしは強く腕を振り払って直人の元に駆け寄った。
逃げ出したわたしを追ってこようとしたそいつ等の一人を、直人は振り上げた拳で一発殴りつけた。
鈍い音とドサッて倒れる音がした途端、わたしの手を力強く引いて一目散にお店から出た。
目指すは奈々がいる車で、予め運転手が開けておいてくれたドアの中、車に飛び乗った。
後ろの直人を強く引っ張ると同時、まだ閉まりきってないドアのまま車は猛スピードで発車した。