■ 親友の世界5


【side 奈々】




『ご飯食べれる?』

『うん』


ゆきみの家は土曜日もおじさんは仕事で居なかった。

おばさんはやっぱり優しい笑顔で挨拶してくれて、洋風な朝食(もうお昼前だけど)を作ってくれた。

朝ご飯なんてあんまり食べないあたしは、残さず全部食べてしまった。

濡れた洋服は朝早くからおばさんが乾燥機にかけていてくれて、すっかり渇いていた。

あたし達はたわいない話をしながら軽く化粧をして、それからお昼過ぎに外へ行く事にした。


『奈々ちゃん、またいつでもおいでね!』


ゆきみのおばさんの優しい声にあたしは小さく頭を下げた。

温かすぎるゆきみの家に、あたしはまた来ていいのかな?

うちとはかけ離れているこの家に、あたしの居場所なんか当たり前になくって。

ゆきみの家が普通なのか、あたしの家が違っているのか、分からなかった。


外に出て一分もしないうちに迎えの車があたし達の前で止まった。

助手席が開くと直人くんが出て来て後部座席のドアを開けてくれた。

まるでお姫様のような扱いを受けるゆきみは、あのチームではかなり高い位置にいるんだって、改めて思った。

それは、同時に哲也くんがその位置にいるって意味な訳で。

哲也くんが大事にしているゆきみを、このチームはしっかりと守っているんだって。

そんな事を考えながらも、あたし達が車に乗り込むと、車体の低いその外見からは想像できないくらいにゆっくりと発車したんだ。

なんともフカフカの座席はお腹いっぱいなあたしの眠気を誘う。



- 29 -

prev / next

[TOP]