■ one3


『はぁ〜…』


どうにも一人になりたくてわたしはあの輪を抜けて裏庭にいた。

お腹痛いなんて嘘に騙されてくれた哲也は最後まで心配してくれたけど、それでも優しい哲也を振り切って一人を選んだ。

今日はやたら気持ちが堕ちる。



『聞こえてんのかよっ!?』



ドキッ!

え、なに?


一人になる予定が、不意に聞こえた声にビクッとして、わたしは声の方を向くと…集団リンチっていうの?女子が女子を囲んでいた。

え〜っとこれは出て行った方がいいのかな?



『てめぇ返事しろよっ奈々!マジいい度胸だな、あんたあたしの事どんだけ馬鹿にしてんだよっ?』



肩を捕まれてそれからドーンと突き飛ばされて尻餅を着く。

あれ?綺麗な子…

そう思った時にはもう、わたしはそっちに身を乗り出していて、突き飛ばされた彼女の所に駆け寄った。



『大丈夫?!』



わたしがそう聞くと無言で頷く彼女。



『…………』



普段哲也やタカヒロ達と常に一緒にいるわたしが、単独で行動するのは珍しくて、ここにわたしが出て来た事により、周りに彼らがいると判断したリンチ女子達は、途端にビクビクしはじめて今にも逃げだしそうに見える。



『何してんの?』



わたしが低い声でそう聞くと、 誰も何も言えなくて口をパクパクしている。



『哲也達はいないよ、ここには』



そう言うと、キョロキョロ辺りを見回して恐る恐るわたしを見て小さな声を発する女子。



『そいつがあたしの彼氏に色目使ったから忠告してただけ…です』



出て来た言葉はわたしをキョトンとさせるだけで専ら意味が理解出来なかった。



『色目?』



わたしの質問に対して彼女はやっぱり何も答えなくて、ただ下を向いてるだけで。



『とにかくそーいう事だから』



ちょっとそーいう事の意味が分からないってば?!

待ってよ、待って!

そんな事を言う暇もなくわたし達の前から走り去る女子達。



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